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河村成肇氏、山崎高幸氏が日本中間子科学会 技術賞を受賞

物構研トピックス
2025年7月 2日

物構研 ミュオン科学研究系の河村 成肇(かわむら なりとし)特別教授、山崎 高幸(やまざき たかゆき)助教が「J-PARC MLFミュオン実験施設における大強度・汎用ミュオンビームライン(Hライン)の開発の功績」により2024年度の日本中間子科学会 技術賞を受賞しました。この賞は日本の中間子科学の技術的発展に著しい貢献があった個人またはグループに対して授与するために設けられました。

山崎 高幸氏(右)と河村 成肇氏(右)

受賞理由となった研究内容

大強度陽子加速器施設(J-PARC)物質・生命科学実験施設(MLF)ミュオン実験施設で開発された”大強度・汎用ミュオンビームライン(Hライン)”は、毎秒108個ものミュオンを生成し、多岐にわたる実験を可能にしました。この革新的な設計により、ミュオニウムの超微細構造の精密分光やミュオンの異常磁気能率の精密測定など、大強度ミュオンを必要とする実験が1つのビームラインで実現可能になりました。

Hラインの設計概念は、PSI(スイス)の将来計画や、中国の核破砕中性子施設(CSNS)で建設中の新しいミュオン施設でも採用されており、その重要性が国際的に認められています。MLFの将来計画でも、このHラインをさらに発展させるための検討が進められています。

J-PARC MLFにあるHライン

受賞の感想

河村 成肇 氏

今回、このような賞をいただき大変光栄に感じております。Hラインは2010年から設計を、2012年から本格的な建設を開始し、最初の実験エリアは2022年に完成しました。途中、非常に多くの方に助けられながら完成に漕ぎつけることができ、関わっていただいた皆様に感謝申し上げます。今後、Hラインはさらに延長し、世界初のミュオン加速器を建設する予定となっています。このビームラインから多くの成果を創出するため、今後もさらに多くの皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

山崎 高幸 氏

この度は素晴らしい賞をいただき大変嬉しく思っております。Hラインの建設にご協力いただいた皆様に感謝いたします。私はHラインの建設に2017年から参加し、2022年にファーストビームを達成しました。現在では大強度ミュオンビームを必要とする様々なユーザー実験がHラインを用いて行われています。さらに今年Hライン第二の実験エリアへのミュオンビーム取り出しに成功し、今後さらなるビームライン延伸を予定しています。今後もご支援いただけますようよろしくお願いいたします。

参考論文

N. Kawamura, T. Yamazaki, et al., “New concept for a large acceptance general-purpose muon beamline”, Prog. Theor. Exp. Phys. 2018, 113G01. DOI: 10.1093/ptep/pty116

T. Yamazaki, N. Kawamura, et al., “New beamlines and future prospects of the J-PARC muon facility”, EPJ Web of Conferences 282, 01016 (2023) DOI: 10.1051/epjconf/202328201016

※ 技術賞は技術的発展に対し授与されるもので、論文は参考資料です

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