3月11日~13日の3日間、水戸市民会館にて「2025年度 量子ビームサイエンスフェスタ」が開催されました。本フェスタは、放射光・中性子・ミュオン・低速陽電子の四つの量子ビームに関わる多様な分野の研究者、技術者、学生が一堂に会し、情報交換と交流を深めるとともに、将来の量子ビーム利用研究のあり方を議論する場となることを目的としています。主催は、物質構造科学研究所、J-PARCセンター、総合科学研究機構(CROSS)、PF-ユーザーアソシエーション(PF-UA)、J-PARC MLF利用者懇談会です。今回のフェスタには、3日間で約600名が参加しました。
初日は「第43回PFシンポジウム」が開催されました。午前中は、施設および光源、ならびにPFリングの報告、さらに開発研究多機能ビームラインの報告が行われ、続いてS2型、T型、PF-S型課題の実験責任者が、それぞれ研究課題の進捗を報告しました。 午後のPF-UA総会では、「PF-UA学生論文賞」の授賞式が行われ、本年度の受賞者である原田 一輝さん(山口大学)、荒川 勝利さん(京都大学)が研究発表を行いました。
PF-UA学生論文賞受賞者
続いて、PF次期光源計画に関するセッションでは、量子マルチビーム施設計画におけるサイエンスおよび加速器技術についての検討状況が報告され、その後の総合討論でも活発な意見交換が行われました。
また、シンポジウム後には低速陽電子実験施設(SPF)の施設報告が行われ、現在稼働中の全反射高速陽電子回折(TRHEPD)、低速陽電子回折(LEPD)を含む4つの実験ステーションの最新状況に加え、汎用ステーションにおけるポジトロニウム(Ps)レーザー冷却実験の実施報告もありました。
PFシンポジウム会場のようす
基調講演では、一杉 太郎 氏(東京大学/東京科学大学)が、「異分野融合のハブとしての量子ビーム施設:協働と共用の推進」と題した講演を行いました。近年のAIロボット技術の著しい発展は、私たちの生活だけでなく、研究開発の進め方そのものにも大きな変革をもたらしています。一杉氏は、実験装置の自動化・自律化についての研究を進める中で、AIロボットの限界と可能性を理解し、それらを使いこなすことが研究者を「自由に」し、そして「強く」すると述べました。また、人間の研究者がより創造性の高い研究に注力することが、研究力の向上につながると強調しました。
山谷 泰賀 氏(量子科学技術研究開発機構)は、「量子科学・量子ビームが切りひらく次世代の医療」と題した講演を行いました。がんやアルツハイマー型認知症などの早期発見に最も有効な方法が、陽電子断層撮像法(PET)です。山谷氏は、世界初のヘルメット型PET装置を開発するなど、PETの高度化と普及に向けた研究だけでなく、目に見えない量子ビームを照射しながら測定可能な、開放型PET装置(OpenPET)の開発に携わってきました。「量子科学で診断して、量子ビームで治療する」次世代の医療を示し、量子ビーム分野の研究者の医療分野への参入を呼びかけました。
基調講演での一杉 太郎 氏(東京大学)
基調講演での山谷 泰賀 氏(量子科学技術研究開発機構)
午後のポスターセッションでは、2会場にわたりユーザーおよび施設によるポスターが掲示され、分野横断的な活発な交流が行われました。
続くパラレルセッションでは、無機材料、有機材料、イメージング、磁性・強相関、生命科学、基礎物理の6つのテーマに分かれ、口頭発表と意見交換が実施されました。
ポスターセッション会場のようす
学生奨励賞は、ポスターセッションの際に審査が行われ、特に優秀と認められた学生6名に授与されました。
学生奨励賞受賞者
最終日には第17回MLFシンポジウムが開催されました。午前中の施設報告では、J-PARC MLFの利用状況に加え、組織改編や学生受け入れプログラムの紹介が行われました。また、今後のMLFロードマップについて、目指すサイエンスとそれを実現するための装置・手法を、ユーザーとともに本格的に議論し進めていく方針が示されました。さらに、装置の高機能化と安定運用に向けた開発・施設整備の報告も行われました。
午後に開かれたMLF利用者懇談会では、ユーザーアンケートに基づく要望への対応報告や、施設利用を円滑にするための意見交換が行われました。続く6名のユーザーによるMLF成果発表では、分野を横断した質問や提案が交わされ、活発な議論が展開されました。
MLFシンポジウム会場のようす