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2004年のニュースから 2004.12.16 |
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〜 3年目のNews@KEK 〜 |
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News@KEKは2002年1月の創刊から今回の記事で158本目になります。皆様にお伝えしたニュースを振り返り、この1年の出来事をまとめてみましょう。 法人化とwebサイト更新 今年4月1日、大学共同利用機関法人が発足し、KEKも自然科学研究機構、情報・システム研究機構、人間文化研究機構とともに、法人としての新たな一歩を踏み出しました。加速器を使った物質・生命の構造や宇宙の起源の謎に迫る研究は従来どおり継続されていますが、webサイトは少し装いを変えました。これからも最先端の科学・技術のニュースやトピックスを多くの皆様にお伝えするとともに、KEKの施設を使って研究を進めている大学などの共同利用研究者にとって使いやすいwebサイトとなるよう、努力していきたいと考えています。 国際会議の成果 科学研究の最先端の結果は、国際会議などで発表されます。6月12日にはK2K実験グループがパリで開催された「ニュートリノ2004国際会議」で、KEKから250km離れた岐阜県神岡にあるスーパーカミオカンデに入射した人工ニュートリノでも振動現象の存在を発表し、注目を浴びました。 8月には北京で開かれた「高エネルギー物理学国際会議(ICHEP)」でBファクトリー実験の最新成果が昨年に続いて注目を浴びました。今年は米国で同様の実験を行っているスタンフォード線形加速器センター(SLAC)を中心とする実験グループが同様の実験結果を出したことで、今後の展開にさらに期待が高まっています。また、この会議では次の世代の高エネルギー実験を遂行するためのリニアコライダー計画について、世界で一つの加速器建設を実現するための加速器技術の選択という、大きな発表がありました。 同じ8月、東海村で原子核物理学に関する大きな国際会議である「NP04」が開かれ、J-PARCが完成した時の研究計画を議論するために国内外から110名の研究者が参加しました。 生命科学や物質材料科学の進展 生命活動に必須のタンパク質の立体的な構造解明は、病気の治療や新しい薬の発明などに欠かせない研究の道具となっています。また新しい物質材料の機能や構造を解明する研究も進んでいます。これらの研究においては放射光科学研究施設や中性子科学研究施設、ミュオン科学研究施設が大活躍しました。 放射光を使った研究では、細胞内の微小管という線路の上を運び屋タンパク質キネシンが動いていく仕組みや、微小管を解体する変わり者キネシンの構造、院内感染菌の一つである緑膿菌の薬剤排出ポンプの構造、遺伝子の転写がさまざまなタンパク質や小さな分子で巧妙に調節されている仕組みなどが解明されました。また、関節リウマチや新しい抗マラリア薬を作るための基礎となる重要な情報も得られています。 中性子を使った研究ではリチウム電池の内部で水素原子が移動する様子やコンクリートが固まる仕組みの観測など、今後の高性能な電池や建築材料の開発に欠かせない知識が得られています。 ミュオンを使った研究では、我々の生活になじみ深いものとなった青色発光ダイオードの発光原理に関わる研究などが進んでいます。 学生と最先端の科学と 新しい研究分野を切り拓いていくのはいつの時代も若い研究者の熱意です。今年は初めての試みとして、スイスのジュネーブにあるCERN研究所に日本から3名の実習生が参加しました。また、今年も第15回総研大夏期実習が開催され、加速器ビームを用いた実習も含めたいろいろな講義が開催されました。 大学院生が普段どのような研究生活を送っているか、その一端を「K2K実験の研究者の日常 〜150人が共に研究をする現場〜」でかいま見ることができます。 今年は、中学生や高校生の体験研修の申し込みが増えた年でもあります。霧箱や加速管を使った実習で目をきらきらと輝かせて作業に取り組む生徒さんの姿を見ると、実習を行う側としてもとてもやりがいを感じます。 Belle実験グループでは世界でも初めての試みとして、加速器を使った実験データから新粒子を探索するためのプログラムB-Labを公開し、茨城県立竹園高校などで講義と実習を行いました。 理数系離れが社会的にもいろいろと指摘されていますが、このような実習や講義を通じて一人でも多くの生徒さんが理科好きになって、研究者としての道を選んでくれたらと思います。 加速器や測定器の技術も向上 華やかに見える最新の科学研究の成果も、毎日のたゆまぬ技術開発があってこそ、です。今年紹介した記事でも様々な最先端の技術開発がありました。 世界最高強度のミュオン、中性子を使った物質構造の研究、世界でもトップクラスのタンパク質構造決定用放射光ビームラインやマイクロビームX線細胞照射装置、加速器のキッカーマグネットやBelle測定器のシリコンセンサーの開発、実験データの高速ハイウェイを支えるSuperSINET、KEKB加速器の連続入射技術、ファラデーカップ賞を受賞した干渉計やエックス線HARP-FEA検出器、重力波望遠鏡のための冷凍機システムや、CERNのアトラス実験のための超伝導電磁石の地上励磁試験の成功、ニュートリノの質量を調べるDCBA実験の測定技術、世界で初めて成功した陽子の誘導加速、放射光を使って関節軟骨を見ることに成功した新しい整形外科用画像診断法などです。 文化勲章や猿橋賞など News@KEKの記事としては取り上げませんでしたが、今年はKEKの職員がいろいろな賞を受賞しました。11月3日には戸塚洋二機構長が文化勲章を受章するという、嬉しいニュースがありました。加速器の研究開発を続けてきた小磯晴代教授は5月29日に猿橋賞を受賞しました。 ナンバーワンの科学・技術もオンリーワンの科学・技術も。世界からも注目を集めるKEKの研究開発。来年も幅広い分野で活動を続けるKEKからのニュース記事にご期待ください。 次回は1月6日(木)に掲載予定です。
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