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News@KEKで振り返る2006年 2006.12.28 |
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〜50本の記事〜 |
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2006年ももうすぐ終わりですね。師走も押し詰まった忙しい中にも、皆様それぞれにこの1年を振り返っていることと思います。News@KEKもこの1年、皆様のご愛読をいただきながら、50本の記事をお届けすることができました。今回は、お届けしたNews@KEKから2006年を振り返ります。 朝永博士生誕100周年 今年は物理学者朝永振一郎博士の生誕100周年の年でした。朝永先生は、1965年に量子電磁力学の構築の業績によりノーベル物理学賞を受賞されるなど、日本の素粒子物理学の発展に貢献された方です。一方で、「共同利用」の理念による研究所の実現にも尽力され、KEKの前身である原子核研究所や高エネルギー物理学研究所の設立に大きな寄与をされた方でもあります。KEK史料室では、「朝永振一郎博士と共同利用研究所」と題した企画展示を9月以降続けてきました。 陽子加速器をとりまく情勢(1) その朝永先生の尽力もあり1971年に設立された高エネルギー物理学研究所は、12GeV陽子加速器を用いた研究施設としてスタートしました。この陽子加速器は、今日の高エネルギー加速器研究機構にまで受け継がれ、原子核・素粒子実験、中性子・ミュオン実験、加速器の研究開発に数多くの業績を残してきました。この加速器も、昨年の12月には、主リングからのビーム取り出しによる原子核・素粒子実験が、今年の3月にはブースターを利用した中性子・ミュオンのビーム実験が終了し、その供用の歴史に幕を閉じました。1月と5月には、12GeV陽子加速器の35年の軌跡を振り返るシンポジウムが開かれ、これまでの功績が語られ、次代の大強度陽子加速器(J-PARC)への期待が語られました。 陽子加速器をとりまく情勢(2) 12GeV陽子加速器の使命を引き継ぐべく、現在建設中の大強度陽子加速器(J-PARC)にも、マイルストーンとなる出来事がありました。2月にKEKと日本原子力研究開発機構が「J-PARCセンターの設置等に関する協定」を締結し、J-PARCセンター(永宮正治センター長)が設置されました。これは、J-PARCの運営に関する業務を両機構が円滑に実施することを目的としたものです。また、3月にはJ-PARCセンターの設立記念式典が開かれ、両機構関係者、文部科学省関係者、茨城県や東海村の関係者らが出席し、J-PARCセンターの船出を祝いました。建設も進んでおり、ニュートリノビームラインとミュオン科学研究施設の状況は、このNews@KEKでも取り上げました。またリニアックでは、11月21日に、初めてビームを発生・加速させることに成功し、平成20年度の供用開始に向けて、J-PARC加速器は本格的なビーム調整試験の段階に入りました。 Bファクトリーの成果 Bファクトリーでは、引き続き実験データを順調に蓄積しています。KEKB加速器では、ピークルミノシティの記録を次々に更新するなど、その性能を益々高めています。入射器の陽電子源では単結晶標的を世界で初めて実用化し、陽電子の生成効率を上げるなどの新たな開発成果がありました。 Belle測定器により集められた実験データの解析からは、荷電B中間子の崩壊頻度におけるCP対称性の新たな破れの発見や、B中間子がタウ粒子とニュートリノへ崩壊する珍しい事象を捉え、超対称性理論で予言される荷電ヒッグス粒子の存在領域を更に限定するなどの成果が発表されました。 また、Belle実験グループでは、実験データの一部をインターネットを通して公開し、高校生などに「新粒子探索」に参加してもらう「B-Lab」の取り組みを行っています。8月には、珍しい粒子を発見した長野県の高校生などに記念品を贈呈しました。また、9月には、B-Labプログラムも含めた素粒子サイエンスキャンプ「BellePlus(ベル・プリュス)」を実施し、全国から集まった高校生に素粒子物理の研究の現場を体験してもらいました。 フォトンファクトリーの展開 今年のNews@KEKでは、放射光科学研究施設:フォトンファクトリー(PF)からのニュースが多かったことが印象に残ります。昨年改良が加えられたフォトンファクトリーからは、様々な分野の研究成果などを、実に13本の記事としてお届けしました。最近、放射光を用いた研究の中核となっているタンパク質構造解析に関しては、20年以上も謎だったインスリン受容体の立体構造が解かれたニュースをはじめとして、多くの成果をお伝えすることができました。その他にも、環境を浄化する植物、世界一のフェノール合成触媒、中国から来る黄砂、次世代のハードディスク・巨大磁気抵抗物質など、研究の対象がバラエティに富んでおり、私たちの生活に身近なものも多いことがわかるでしょう。このように放射光が物質や生命の謎を解きあかしていくにつれて、現在の放射光ではまだ見えないものを見えるようにする「新しい光」が求められるようになってきています。KEKでは、次世代の光源加速器として「エネルギー回収型リニアック(ERL)」の開発研究を進めており、今年度から「ERL計画推進室」が設置されました。 国際協力の進展 その他にも海外からのニュースとして、日米科学技術協力事業の中から、CDF実験でのBs中間子の粒子・反粒子振動の観測、及びK2K実験で使われたSciBar検出器を再利用したSciBooNE実験の起工式を、またCERN・LHCでのATLAS実験計画からは、測定器のミューオントリガーシステムの建設状況などをお届けしました。 また、国際協力関係では、アジア地域将来加速器委員会(ACFA)についてご紹介しました。アジア諸国との研究交流は引き続き活発で、特にインドとの連携が進みました。アジア地域の交流事業として実施している拠点大学交流事業は、日本・中国・韓国の枠組みに、今年度から新たにインドを加えて展開しています。 各種イベントを実施 KEKの伝統行事として行われている一般公開は、高エネルギー物理学研究所時代から通算30回を数え、9月3日の今年の公開日には2900人の方が来場しました。また、11月25日と12月2日には恒例の公開講座が開催され、両日とも盛況を博しました。その他にも、科学技術週間の施設公開、まなびピアいばらき2006やつくば科学フェスティバルへの出展など、様々なイベントで皆様にお目にかかりました。来年も、いろいろな機会で皆様とお会いできるのを楽しみにしています。年明けの1月6日からは、常設展示ホール「KEKコミュニケーションプラザ」を土日・祝日もオープンしますので、是非ご来場ください。 それでは、皆様よいお年をお迎えください。
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