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水中のタンパク質分子のねじれ運動を動画として観測することに成功~タンパク質の分子機能解析を生体に極めて近い環境で実現する新技術~

2012年4月10日

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
国立大学法人 東京工業大学
独立行政法人 科学技術振興機構
韓国科学技術院

韓国科学技術院(KAIST)のHyotcherl Ihee(イ ヒョッチョル)教授らの研究グループは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の足立伸一(あだち しんいち)教授、東京工業大学大学院理工学研究科の腰原伸也(こしはら しんや)教授、および米国シカゴ大学の研究グループとの共同研究により、X線を用いて、水中のタンパク質分子のねじれ運動を100億分の1秒の時間精度で動画観測することに初めて成功した。 血液中で酸素分子を運搬するタンパク質であるヘモグロビン分子に短時間のレーザー光を照射し、照射後に進行するタンパク質の分子構造変化を、フォトンファクトリーのNW14Aを利用し、時間分解X線溶液散乱法によって追跡した。この手法は、生体環境に極めて近い室温の水溶液中で、様々なタンパク質が実際に働く自然な姿を動画として捉えることを可能とする画期的な手法であり、生命活動にとって重要なタンパク質の分子機能を解析するための新技術として大いに期待される。
本研究成果は、米国化学学会誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン速報版で近日中に公開される。

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図 二枚貝のヘモグロビンの模式図。
上下に二つのユニットが重なっており、二つのユニットの相対的な位置関係の変化により、酸素が結合しやすい構造(R型)と結合しにくい構造(T型)の間を行き来する。それぞれのユニット内の中央付近に収まっている平面状の分子が、鉄-ポルフィリン錯体である。


新聞掲載等

2012.04.16
日刊工業新聞(17面)◇たんぱく質のねじれ運動 100億分の一秒で観測