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KEK

100億分の1秒で光増感分子の動きを観測~太陽電池や光触媒の機能をつかさどる光励起構造を解明~

2012年6月29日

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
国立大学法人 東京工業大学
独立行政法人 科学技術振興機構

高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の佐藤篤志(さとう とくし)研究員、野澤俊介(のざわ しゅんすけ)准教授、足立伸一(あだち しんいち)教授、大学共同利用機関法人自然科学研究機構分子科学研究所の藤井浩(ふじい ひろし)准教授、東京工業大学大学院理工学研究科の腰原伸也(こしはら しんや)教授の研究グループは、100億分の1秒の時間分解能で、太陽電池や光触媒の基礎反応である電子移動のメカニズムを明らかにした。光エネルギーを化学エネルギーに変換する素過程の解明は、今後の材料開発に有益な情報となる。
本研究で用いたポンププローブ法による時間分解X線吸収分光測定は、光照射によって起こる化学反応過程での電子移動や、それに伴う分子構造の変化を観測できる。この手法により、色素増感太陽電池、光触媒、有機ELなどのデバイスが実際に動作している様子を観測することが可能となったため、高効率化などへの進展が期待できる。
本成果は、米国化学学会誌「The Journal of Physical Chemistry C」のオンライン版で近日中に公開される。

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図 電子移動による構造変化の概念図
電子が図中の中心にあるルテニウム(緑色)から配位しているビピリジン分子に移り、その後電子がビピリジン間をホッピングしている。