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超低速ミュオンビームライン用「超伝導湾曲ソレノイド電磁石」設置

物構研トピックス
2012年7月10日

7月5日、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)にて、加速器トンネル内にあるミュオンターゲットから実験ホールへミュオンを導く超伝導湾曲ソレノイド電磁石が搬入、設置されました。

集合写真。右側にあるS字状の円筒形のものが超伝導湾曲ソレノイド電磁石

超低速ミュオン用ソレノイドの模式図。緑色の部分が今回設置された超伝導湾曲ソレノイド電磁石

加速器から作られる素粒子の一つ、ミュオンを利用した研究は、磁性・超伝導などの物性物理学、電子材料の特性解析、さらには考古学的史料の非破壊分析など多岐にわたり行われています。平成23年度より始まった研究プロジェクト「超低速ミュオン顕微鏡が拓く物質・生命・素粒子科学のフロンティア」は、物質内部の構造をナノメートルの深さ分解能で、3次元イメージングを実現し、物質の表面から内部にわたる現象の走査的な観測により、表面とバルクの関係性を明らかにし、また界面が作り出す諸現象の微視的機構を解明することを目的としています。

超低速ミュオン顕微鏡の実現に向け、現在MLFではビームラインの建設が進められています。発生したミュオンを大立体角で取り込む「捕獲用大立体角MICソレノイド電磁石」に続き、実験ホールへとミュオンを導く「超伝導湾曲ソレノイド電磁石」が設置されました。ソレノイドは、円筒の中心部に強い磁場を発生させ、磁場にミュオンを巻きつけるようにして、ミュオンを運搬します。そして、何と言っても特徴的なのが、S字状のカーブです。加速器トンネルの中でつくられたミュオンは、トンネル上流に対して左右それぞれ45度、120度の4方向に集められ、ビームラインに導かれます。このビームラインは、45度曲がった方向に取り出し、続く直線状のソレノイドによってトンネル外まで運搬されます。またミュオン生成標的付近は放射線量が高くなってしまうため、取り出し口側で再び45度曲げることによって、実験ホールへの放射線の影響を低減させる設計となっています。

超伝導湾曲ソレノイド電磁石の設計、製作にあたった下村氏

「一年越しにようやく完成した。」そう語ったのは、下村浩一郎准教授(KEK物構研)。池戸豊 博士研究員とともに、本ソレノイドの設計・製作を行ってきました。途中、東日本大震災の影響で製作が止まることもありましたが、無事設置できて、一安心した様子でした。ソレノイドはコンクリートの壁の中へと入れられ、実際の運用時には姿を見ることはできません。

今後、このソレノイドの下流に「超伝導収束ソレノイド電磁石」を設置、低速ミュオンを取り出します。さらに低速ミュオンから超低速ミュオンを発生させる装置群を設置し、今年度中に超低速ミュオンを取り出すことを目指しています。


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