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第3回 TIA-nano公開シンポジウム開催

物構研トピックス
2012年7月24日

7月19日、一橋講堂(都内)にて、つくばイノベーションアリーナ(TIA-nano)の公開シンポジウムが開催されました。

TIA-nanoは2009年の産学官の共同宣言によりつくばに発足したナノテクノロジーの研究拠点。2012年4月よりKEKも参画し、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構(NIMS)、筑波大学、と合わせた4機関が中核となり、主要企業・大学との連携網を広げ、産学官に開かれた融合拠点として、ナノテクノロジーの産業化と人材育成を進めています。今回の公開シンポジウムは、「TIA-nanoが提案するオープンイノベーションハブ」を全体テーマとして、これまでの成果紹介や、産業界と共に目指すナノテクノロジーの研究開発および研究人材育成の将来像について、議論を行う場として開催され、産学官から350名以上が集いました。

冒頭、文部科学省大臣官房審議官の森本浩一氏および経済産業省大臣官房審議官の中西宏典氏より来賓挨拶があり「頭脳循環のハブとして機能し、そこから生まれた成果を世界に発信していただきたい。」とのメッセージがありました。

午前の部では、TIA-nano運営最高会議議長の岸 輝雄氏より活動報告があり、KEKが参画したことが全体に報告されました。放射光を利用できるPhoton Factory(PF)、中性子・ミュオンを利用できるJ-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)という巨大インフラはナノテクノロジーにおける評価という点で有用なツールとなります。続く講演の中で、野村昌治KEK理事から実例を挙げた詳しい施設紹介が行われました。世界の放射光施設にはナノ物質・材料の研究機関が併設されている施設が多く、量子ビームが物質評価に有効な道具であることを示しています。また大学共同利用機関であるKEKは、次世代研究者を育成する教育施設の一翼も担っていきます。
産業界からの講演では、新興国の伸びを見据えたマーケットで世界を圧倒的にリードする技術や、エネルギー事情を背景とした新しい情報通信技術(ICT)の必要性などが発表され、産業界のニーズのすくい上げ、研究成果の積極的に事業化するためのガバナンス、サポートの強化の要望がありました。

午後には、具体的な事例に関する発表がありました。人材育成では、昨年度設立したTIA大学連携大学院コンソーシアムを核として各大学の強い分野を提供し、学位プログラムを作ることを目指しています。また幅 淳二KEK素核研教授より、KEKの参画によってTIA-nanoにナノ計測・コア研究領域の設立が可能となり、ナノ計測タスクフォースを立ち上げて検討を進めていることが報告されました。この中で、KEKが次世代放射光源として検討しているERL(エネルギー回収型ライナック)及び建設中のコンパクトERL、そしてKEKで開発された高エネルギー実験用の高性能SOI(Silicom-On-Insulator)素子が、つくば全体のナノテクノロジー革新にいかに有用であるかの紹介がありました。
そして研究開発の連携は既に動き始めており、例えば、ナノテク材料として注目されているカーボンナノチューブは、加盟企業に提供され、製品開発を行っています。また新しい研究開発の舞台となる施設も建設が進められています。7月に完成したNIMSナノグリーン棟に加え、ナノ材料の開発に不可欠なスーパークリーンルーム(SCR)を産総研内に設け研究環境を整えていく予定です。

ポスターセッションでは、個別の連携の種があちこちで芽生え、参加した企業、研究所双方にとって良い情報交換の場になりました。

つくばに連携拠点を置く最大のメリットは、材料、計測、計算科学、工学など幅広い分野かつ層の厚い研究者が、中核4機関だけでも約5,000名います。これらの知を上手く繋げることで、新しいナノテクノロジーを創出しようとしています。


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