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蓄電池解析専用の中性子ビームラインSPICA完成

物構研トピックス
2012年9月 7日

9月4日、東海村にあるJ-PARCの物質・生命科学実験施設に、蓄電池解析専用の中性子ビームラインSPICA(スピカ)が完成し、完成披露式典が行われました。
このビームラインは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING事業)の一環として、KEKが京大原子炉実験所らの協力を得て建設したものです。

 

(左)テープカット。背面青いコンクリート遮蔽体の奥にSPICAがある。
左から、池田裕二郎J-PARCセンター長、宮本聡 経済産業省製造産業局審議官、森本浩一 文部科学省大臣官房審議官、古川一夫NEDO理事長、野村昌治KEK理事、吉川潔京都大学副学長、小久見善八RISINGプロジェクトリーダー。
(右)SPICAを見学する森本審議官

SPICAは、リチウムイオン電池などの蓄電池を充放電させながら、リチウムの移動する様子や構成材料の原子配列とその変化を中性子を用いてリアルタイムで観察できる世界唯一の専用装置です。J-PARCの大強度陽子ビームによって得られるパルス中性子を利用し、エネルギー分解能、空間分解能の総合性能が世界一の性能を誇ります。これにより、原子配列の1000分の1A(1Aは100億分の1メートル、0.1ナノメートル)ほどの変化さえも見分けることができ、高密度にリチウムイオンを取りこむ構造や、繰り返し充放電による性能劣化の原因を解明し、蓄電池の一層の性能向上につなげていきます。また、将来的には、現在主流となっているリチウムイオン電池に代わる「革新型蓄電池」の開発を目標としています。

式典には、来賓として文部科学省大臣官房の森本浩一審議官、経済産業省製造産業局の宮本聡審議官が列席され、SPICAに対する期待の言葉をいただきました。

SPICAは2010年よりビームライン建屋の建設を開始し、東日本大震災の影響を受けたものの、2012年2月に装置手前まで中性子ビームを導入、同年6月から検出器など装置の調整運転を行い、7月には回折装置の分解能(格子面間隔の相対的決定精度Δd/d)0.09%を達成しました。今後、10月からの加速器運転開始により機器の更なる調整運転を進め、早期に実験を開始する予定です。


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