11月1日、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)にて建設中の超低速ミュオンビームラインにて、「超伝導収束ソレノイド電磁石」までミュオンビームが通ったことが確認されました。これは7月に搬入された超伝導湾曲ソレノイド電磁石に続く部分で、超低速化させるターゲット直前まで、ミュオンビームが到達したことになります。
平成23年度より始まった研究プロジェクト「超低速ミュオン顕微鏡が拓く物質・生命・素粒子科学のフロンティア」は、物質内部の構造をナノメートルの深さ分解能で、3次元イメージングを実現し、物質の表面から内部にわたる現象の走査的な観測により、表面とバルクの関係性を明らかにし、また界面が作り出す諸現象の微視的機構を解明することを目的としています。
超低速ミュオン顕微鏡の実現に向け、現在MLFではビームラインの建設が進められています。陽子ビームから発生したミュオンを大立体角で取り込む「捕獲用大立体角MICソレノイド電磁石」、実験ホールへとミュオンを導く「超伝導湾曲ソレノイド電磁石」に続き、9、10月には「超伝導収束ソレノイド電磁石」が設置されました。このソレノイドは、レンズで集光するようにミュオンを収束させること、ミュオン発生時に同時に発生してしまう陽電子を分離させるためのものです。10月31日深夜から調整が始まり、翌11月1日、ミュオンと陽電子が分かれた状態で、ソレノイド終端まで到達していることを確認できました。
今後さらに調整を進め、高密度のビームに収束させていきます。また本ソレノイドの下流には、超低速ミュオンを発生させる装置群を設置、今年度中に超低速ミュオンを取り出すことを目指しています。