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和達大樹氏、日本放射光学会奨励賞を受賞

物構研トピックス
2013年1月17日

1月13日、名古屋大学にて開催された第26回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムにて、和達大樹(わだち ひろき)氏(東京大学大学院工学系研究科附属 量子相エレクトロニクス研究センター)が日本放射光学会奨励賞を受賞しました。この賞は、日本放射光学会員である35歳未満の若手研究者を対象に、放射光科学に関する優れた研究成果に対して授与されるものです。

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左から:篠原佑也氏、日本放射光学会長・水木純一郎氏(関西学院大学教授)、和達大樹氏

受賞対象となった研究は「遷移金属酸化物薄膜の共鳴軟X線散乱による研究」です。X線散乱は原子配列を調べる手法の一つで、特に放射光軟X線では特定の元素を選択した測定ができ、遷移金属酸化物薄膜の電子スピン・軌道秩序、格子構造を調べることができます。近年関心の高い、磁石の性質(強磁性)と誘電性を併せ持つマルチフェロイック性を示す薄膜について、和達氏はKEK物構研の村上洋一教授らのグループと共に、マンガン酸化物薄膜の磁気構造を直接観測、決定しました。この業績は、世界に類の無い画期的な成果として高く評価されました。

また和達氏はカナダのCanadian Light Sourceで共鳴軟X線散乱装置の建設、実験を行い、帰国後は村上氏のグループと共同でフォトンファクトリー(PF)のビームラインBL-16Aの軟X線やBL-3A、4Cの硬X線を利用し研究を行っています。今後は磁場中での遷移金属酸化薄膜の振る舞いや、ナノビームを用いた空間分解能測定、X線自由電子レーザー(XFEL)を用いた時間分解能測定を行っていきたいと語っています。

同時に奨励賞を受賞した篠原佑也氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科)は、SPring-8の高輝度放射光源からの高コヒーレントX線を利用したX線光子相関分光法(XPCS)を本格的に立ち上げ、ソフトマテリアル、特にゴム中に埋入したナノ粒子のダイナミクスを観察し、タイヤなどの実用材料の挙動をミクロな観点から解明したことが高く評価されました。 PFの次世代放射光源として検討しているエネルギー回収型ライナック(ERL)のコヒーレント光源はまさにこの手法に適した光源で、展開されるサイエンスに期待がもたれています。篠原氏は、2011年6月に米国コーネル大学にて行われた「回折限界X線利用のサイエンス」ワークショップでの招待講演が、 この研究を進めるにあたって重要な役割を果たしたことについて受賞講演中で言及し、PFのサポートに対しても謝辞を述べられました。


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