11月15日、物構研コロキウムとして、京都大学大学院医学研究科・先天異常標本解析センターの山田重人教授による 「発生解剖学から発達を考える~放射光のヒト胎児・胚子三次元イメージングへの応用」と題した講演が行われました。
山田教授の所属する京都大学・先天異常標本解析センターは、ヒト胚子の標本が数万点保存されている、世界的にも貴重な施設です。 胚子の形態や構造からヒトの発生に関わるさまざまな情報を得ることができ、このようなアプローチを「発生解剖学」と呼びます。胚子の内部を見るためには、 組織切片を作成し三次元構築する方法が古くから行われていましたが、軸合わせの必要のない直接三次元情報が得られるイメージング法が求められています。 山田教授はその一つとして放射光X線位相CT法に着目し、フォトンファクトリーのBL-14Cで研究を進めています。
X線位相イメージングはX線の波としての性質を利用した手法であり、吸収コントラストがつきにくい軟組織のイメージングに適しています。 さらに数10ミリメートルの大きさである胚子は放射光で観察するのにぴったりの大きさであり、非破壊で測定できることも貴重な試料であるヒト胚子の観察には向いています。 「通常のX線イメージングはX線が『通らない』ことを利用しているのに対し、この手法はX線が『通り抜ける』ことを利用しているのが面白いと思っています」と語った山田教授は、 X線位相CT法で観察したさまざまな段階の胚子の画像を紹介されました。これらの画像は、正常発生のしくみを知るのはもちろん、隠されたさまざまな異常発生に関しても貴重な情報となります。
ヒトの発生という身近で興味深い現象を題材にした講演には多くの聴衆が集まり、講演終了後も活発な質疑応答が行われました。
物構研では、定期的に「物構研コロキウム」を開催しています。このコロキウムは、物構研のスタッフが、研究の視野を広げ、 所内のアクティビティの情報を共有し、異なる研究プローブの協奏的利用について議論し、考える機会のひとつとして位置付けられています。 外部の著名な研究者をお呼びして、貴重なご講演をいただくこともそのひとつのテーマとなっています。
次回は12月9日(金) 10時30分から、京都大学の北川宏教授をお招きして「元素間融合を基軸とする新物質創製と機能性材料開発」と題する講演が予定されています。