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KEK

アミン化合物の右手系(R型)のみに作用する酵素を開発

物構研トピックス
2014年2月27日

富山県立大学の浅野 泰久 教授、安川 和志 研究員らは、アミン化合物(R型α-メチルベンジルアミン、(R型α-MBA))に作用する新しい酵素を開発、 この酵素を用いて鏡像異性体であるα-MBAの左手系(S型)のみを100%の高純度で生産する方法を開発しました。 この酵素とR型α-MBAの複合体の立体構造をKEKフォトンファクトリーのX線結晶構造解析によって決定、その反応機構を分子レベルで解明しました。

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左図:アミン酸化酵素とR型α-MBAの複合体構造
右図:アミン酸化酵素の作用
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鏡像異性体の模式図
鏡に映った鏡像と実像のような関係にある。この図のように構成する元素や官能基は全く同じでも、同じ方向に重ね合わせることができない化合物を鏡像異性体という。

有機化合物の中には、全く同じ組成でありながら、立体構造的には実像と鏡像の関係にある2種類ができるものがあります。これを鏡像異性体とよび、右手系(R型)と左手系(S型)と区別しています。 両者の性質は生物の体内では異なり、特に医薬品に使われるサリドマイド分子では左手系は催眠・鎮静作用があるのに対し、右手系は胎児への強い催奇性を持つことが知られています。
このような背景から、医薬品などの開発では鏡像異性体を低コスト・高純度で作り分けることが重要となっています。

浅野教授らのグループは、医薬品原料として利用されているα-MBAに注目し、S型とR型の混在しているα-MBAから100%S型のα-MBAを作る方法の開発に取り組んできました。 今回ブタ腎臓由来のD-アミノ酸酸化酵素からR型のα-MBAだけに作用する酸化酵素を世界で初めて開発しました。 この酵素をS型とR型の混在しているα-MBAに作用させると R型のみが中間体α-メチルベンジルイミンに変換され、再びα-MBAに還元される過程でS型とR型が50%ずつできます。ここに再び酵素を作用させ、R型を変換、この工程を繰り返すことで、純度100%のS型α-MBAを得ることに成功しました。 今回開発したこの方法は、従来の手法の倍の収率でS型α-MBAを生産でき、鏡像異性体の選択的生産の高効率化、低コスト化に有用で産業利用が期待されます。

本成果は、ドイツの科学雑誌Angewandte Chemie International Editionのオンライン版で公開されました。また、本研究は、JST戦略的創造研究推進事業(ERATO)「浅野酵素活性分子プロジェクト」の一環として行われました。

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