3月15日、つくば国際会議場にて量子ビームサイエンスフェスタが開催されました。これは放射光、中性子、ミュオン、低速陽電子の4つの量子ビームの総合的な利用促進を目的に年一回開催されているものです(昨年までは物構研サイエンスフェスタ)。翌16日には、 第7回MLFシンポジウム(MLF: J-PARCの物質・生命科学実験施設)、第33回PFシンポジウムが合同開催され、約570名の参加がありました。
開会にあたり、金谷利治 物質生命ディビジョン長より、量子ビームに関わる全ての組織とコミュニティーが一体となって量子ビームサイエンスを盛り上げて行きたいとの挨拶がありました。
基調講演では、高橋嘉夫教授(東京大学大学院)による原子スケールからの素過程を積み上げることで地球規模の気候変動のしくみを解明する地球科学に関する講演、五十嵐圭日子准教授(東京大学大学院)によるタンパク質の活性にプロトン(H+)の移動を伴う異性体への変換が起こっていることを中性子によって解明した講演がありました。午後からは、複数のパラレルセッションに分かれて講演が行われました。またポスターセッションでは300を超える発表があり、優秀な学生発表6件に対し、奨励賞が授与されました。ポスター会場は異分野の研究者、様々なビームを利用するユーザーが一堂に会し、異分野連携による新分野創出につながる場となりました。
二日目は、第7回MLFシンポジウムと第33回PFシンポジウムに分かれ、開催されました。これらシンポジウムは、施設の運営やあり方について、施設側とユーザーとが率直に議論し、検討していく場となっています。
MLFシンポジウムは、施設報告、パルス中性子施設の建設において指導的な役割を果たされた故渡邊昇KEK名誉教授、ミュオン施設の建設を主導された故西山樟生KEK名誉教授の追悼セッションの後、特別セッション、研究成果の発表が行われました。岡田真人教授(東京大学大学院)によるスパースモデリングによる量子ビームデータ解析についての提案、中性子の特徴を活かした水素化物探索の成功例や、マルチプローブ利用により明らかにされたバナジウム酸化物の特異な電子状態などの発表の他、新設された中性子イメージング用ビームライン(BL22、RADEN)専用の検出器開発なども報告されました。
PFシンポジウムでは、将来計画として次期光源の検討状況や運営体制、今後の方針について報告され、ユーザーとの意見交換が行われました。ユーザーからは、ユーザーが一体となって施設を牽引することで世界のトップを狙っていくという、強い意志が示され、次期光源に向けた大きな一歩となりました。また、この計画を引っ張っていく強い組織づくりも求められました。最後に、PFシンポジウムでの意見を踏まえ、今後、施設とユーザーが一体となって、この計画を推進することが確認されました。
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>>2015年度 量子ビームサイエンスフェスタ 第7回MLFシンポジウム、第33回PFシンポジウム