チョコレートを題材に結晶型の違いによる性質の違いを体験するワークショップ「チョコレイト・サイエンス」を開催しました。チョコレイト・サイエンスは2013年度に立上げて以来、つくば市内にあるチョコレートの製造を手掛ける株式会社東京フードの協力を得ながら拡充し、毎年冬期に科学館など各地で行なっています。今年度はKEKのキャンパスがある東海村とつくば市、そして都内、愛知県、岐阜県の計5回実施しました。
チョコレイト・サイエンスは、チョコレートを構成するココアバターの分子の並び方の違い(多形結晶)が、食感や美味しさにどのように関係しているのかを、実験しながら学習するプログラムです。実験では、チョコレート作りに必要なテンパリング操作(温度調節)の有り、無し、など3種類のチョコレートを作り分けます。その結果を、光沢などの見た目、硬さなどの触感、そしてチョコレート特有の食感や風味の感じ方などを試食、比較します。講義では、食感の違いを作り出す結晶の違いを、放射光や中性子を利用した研究に基づいて解説しています。
「同じ材料でも、こんなに味や風味が違うことがわかってびっくりしました。」や「科学的な観点と、家庭科的な観点、同じチョコでも別々で見ると全然違って深いなと思いました。」などの感想が参加者から寄せらせました。
チョコレイト・サイエンスは内容を充実させながら、年々広がりを見せています。チョコレイト・サイエンスの監修をつとめる上野聡教授(広島大学)は、「チョコレートは何故美味しいのか」を2016年末に集英社文庫より出版し、食品物理学の面白さや放射光・中性子といった量子ビームを用いた最先端の研究について易しく解説しています。