3月14日(火)~5日(水)、つくば国際会議場(エポカルつくば)において2016年度量子ビームサイエンスフェスタが開催されました。これは、放射光、中性子、ミュオン、低速陽電子の4つの量子ビームの総合的な利用促進を目的に、年一回開催されているものです。第8回MLFシンポジウム、第34回PFシンポジウムも合同開催され、合わせて約580名の参加がありました。
開会にあたり、KEK物構研の山田和芳所長は、このサイエンスフェスタを毎年春先に街にやってくるサーカスの一団と例えて、将来は、様々な他の量子ビームのシンポジウムを一緒に開催したり、茨城県にとどまらず全国へ飛び出すことを若い方々に期待していますと挨拶しました。
基調講演では、菅野了次氏(東京工業大学)が「物質開拓からデバイスへ~蓄電池開発に果たす量子ビームの役割」と題して、全固体電池として実用化が期待されている、有機溶媒よりはるかに高いイオン導電率を持つ結晶中で、リチウムイオンが動く様子を中性子回折で明らかにした例などをあげ、蓄電池開発にあたって量子ビームの役割について講演しました。また、「構造生物学から迫るオートファジーの分子機構」と題した野田展生氏(微生物化学研究所)は、ノーベル生理学医学賞を受賞された大隅良典氏との共同研究から、選択的オートファジーにおける細胞内での分解ターゲットを選別する共通の機構と、オートファゴソーム形成の初期過程に作られる高次複合体について、放射光を用いた構造生物学研究が明らかにした巧妙な仕組みについて講演しました。
ポスターセッションでは、300を超えるポスターが掲示され、さまざまな分野の研究者やユーザーが交流しました。その中で、優秀と認められた学生6名が選出され、奨励賞が授与されました。
二日目は、第8回MLFシンポジウムと第34回PFシンポジウムが同時開催されました。
MLFシンポジウムでは、第2ターゲットステーション計画について、ユーザーを交えての意見交換が行われました。続いて、ユーザーアンケート調査結果の紹介があり、会場からは施設に対する具体的な要望が出されました。会場の外にはアンケートの集計結果やコメントが貼り出されており、その前で話し合う様子も見られました。午後からは特別セッションとしてアメリカのオークリッジ国立研究所からMutthew Tucker氏をお招きし、Spallation Neutron Source(SNS)での研究について発表いただき、従来の逆モンテカルロ法(RMC)を独自に改良したRMCプロファイル法の紹介とその適用例について解説いただきました。続いて、各ビームラインを用いて行われた実験の成果発表と、ビームラインに関わる設計・製作とR&Dの現状についての報告が行われました。
PFシンポジウムでは、次期光源計画であるKEK放射光計画についての議論が中心となりました。KEK山内正則機構長との懇談も行われ、13日にサテライトで行われたKEK放射光ワークショップに引き続いて、ユーザーからは率直な意見が寄せられ、討論が繰り広げられました。閉会の挨拶をした村上洋一PF施設長は、KEK放射光の実現に向けて着実に進むことと、現在のPFおよびPF-ARについてもきちんと運営していくことが我々のミッションであり、努力していきたいと締めくくりました。
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2016年度 量子ビームサイエンスフェスタ 第8回MLFシンポジウム 第34回PFシンポジウム