神経細胞間の接続部であるシナプス(図1)の形成と再編は、脳発達期の神経回路の形成や記憶学習の際に起きる重要なステップであり、 その調節機構の破綻は自閉症などの神経発達障害の発症と密接に関連することが示唆されています。
シナプス形成を誘導する活性をもつ膜受容体タンパク質 PTPδと、シナプスに局在する細胞接着タンパク質 SALM は、神経発達障害の発症に関連する細胞接着分子です。 これらのタンパク質はそれぞれ軸索終末と樹状突起に発現し、選択的に相互作用することでシナプス前終末の分化誘導を促します。
東京大学 分子細胞生物学研究所の深井 周也 准教授、伊藤 桜子 助教、富山大学大学院 医学薬学研究部 吉田 知之 准教授らの研究グループは、 大型放射光施設SPring-8や KEK フォトンファクトリーの高輝度X線を利用したX線結晶構造解析によって細胞接着分子PTPδとSALMが結合した状態の立体構造(図2)を調べ、 これらの分子が選択的に相互作用する分子機構を明らかにしました。 さらに、二つのSALM分子と二つのPTPδ分子が相互作用してシナプスが形成されることを見いだしました。
この知見は、神経回路形成のメカニズムの解明や自閉症などの神経発達障害の発症機構に関わる、今後の研究に役立つものと期待されます。
この研究成果は、1月18日にNature Communications(オンライン版)に掲載されました。
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