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東京大学と富山大学の研究グループ、細胞接着分子が神経細胞同士を適切につなぐ仕組みを明らかに

物構研トピックス
2018年1月24日

神経細胞間の接続部であるシナプス(図1)の形成と再編は、脳発達期の神経回路の形成や記憶学習の際に起きる重要なステップであり、 その調節機構の破綻は自閉症などの神経発達障害の発症と密接に関連することが示唆されています。

図1. 上:脳、神経細胞、シナプス、下:シナプス前終末と後終末の構造の模式図
シナプスは神経細胞間の信号伝達を担い、主として神経細胞の軸索終末(シナプス前終末)と
他の神経細胞(シナプス後細胞)の樹上突起の間に形成される。
シナプス前終末とシナプス後細胞の間に隙間があり、
シナプス前終末からの神経伝達物質の放出を介して信号を伝える。

シナプス形成を誘導する活性をもつ膜受容体タンパク質 PTPδと、シナプスに局在する細胞接着タンパク質 SALM は、神経発達障害の発症に関連する細胞接着分子です。 これらのタンパク質はそれぞれ軸索終末と樹状突起に発現し、選択的に相互作用することでシナプス前終末の分化誘導を促します。

東京大学 分子細胞生物学研究所の深井 周也 准教授、伊藤 桜子 助教、富山大学大学院 医学薬学研究部 吉田 知之 准教授らの研究グループは、 大型放射光施設SPring-8や KEK フォトンファクトリーの高輝度X線を利用したX線結晶構造解析によって細胞接着分子PTPδとSALMが結合した状態の立体構造(図2)を調べ、 これらの分子が選択的に相互作用する分子機構を明らかにしました。 さらに、二つのSALM分子と二つのPTPδ分子が相互作用してシナプスが形成されることを見いだしました。

図2. PTPδ(緑、薄緑)とSALM5(水色、青)との複合体の立体構造
二つのPTPδと二つのSALM5が集まって複合体を形成している。

この知見は、神経回路形成のメカニズムの解明や自閉症などの神経発達障害の発症機構に関わる、今後の研究に役立つものと期待されます。

この研究成果は、1月18日にNature Communications(オンライン版)に掲載されました。

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