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「はやぶさ2」が戻ってきたら

物構研トピックス
2018年5月 1日

2018年4月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)開発の小惑星探査機「はやぶさ2」と目的地である C型小惑星*「リュウグウ」までの距離が20万kmを切りました。 「はやぶさ2」は、2010年に S型小惑星*「イトカワ」地表の物質を持ち帰った「はやぶさ」の後継機です。 「はやぶさ」が回収した微粒子の解析の結果、S型小惑星は、太陽系初期の情報を多く含む隕石(普通コンドライト隕石)の母天体であることが判明しました。 普通コンドライト隕石は地球に飛来する隕石の大部分を占めます。

 *C型小惑星:小惑星帯に最も多く、岩石中に有機物や水など生命関連物質を含むと推定される小惑星
 *S型小惑星:岩石が主成分と推定される小惑星

東北大学大学院 理学研究科の中村 智樹 教授を代表とする研究グループは長年のフォトンファクトリーユーザーであり、X線回折や蛍光X線を用いて 宇宙塵*などの微粒子の構成元素、構成鉱物とその結晶構造の情報を得る分析を行ってきました。 2011年にフォトンファクトリーで「はやぶさ」の試料を分析したのが中村教授で、いま飛んでいる「はやぶさ2」の分析チームの主要メンバーでもあります。

X線では非破壊で分析ができるので、放射光は希少な試料の最も初期の分析に用いられます。 中村教授の研究グループでは、光学または走査型電子顕微鏡で見て地球外由来の物質だと判断された試料(宇宙塵試料など)は、まずフォトンファクトリーの実験ステーションBL-3Aでスクリーニングされ、科学的価値の高い試料を特定してから、他の詳細な分析へと進むというわけです。

2018年春のビームタイムには、中村教授が南極表雪から採取してきたという宇宙塵試料の分析が行われていました。 私たちの身近なところにも宇宙からの塵は降っていますが、地球由来の塵も多いので、南極のような空気のきれいな場所で採取すると効率がいいそうです。

 *宇宙塵(うちゅうじん):太陽系の惑星間空間に分布する固体の微粒子。多くは直径0.1mm以下。 地球に年間4万トン程度落下している。

順調にいけば、「はやぶさ2」は2018年夏に「リュウグウ」に到着し、2020年の年末に地球に帰還、2021年には「リュウグウ」の試料の一部がフォトンファクトリーで分析される予定です。

顕微鏡で試料を確認し、
X線回折装置に試料をセットします
東北大学 中村 智樹 教授
PF BL-3Aにて 中村智樹研究室のみなさん

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