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フォトンファクトリーの若林大佑特別助教、日本高圧力学会奨励賞を受賞

物構研トピックス
2018年12月 4日

日本高圧力学会の2018年度奨励賞に放射光科学第一研究系の若林大佑(わかばやし だいすけ)特別助教が選出され、11月26日~28日に行われた第59回高圧討論会において授与されました。 奨励賞は高圧力の科学・技術の進歩に貢献した若手研究者・技術者2名までに授与されるものです。

受賞対象の研究課題名は「SiO2ガラスの永久高密度化に関する総合的理解」です。 SiO2ガラスの永久高密度化はノーベル物理学賞を受賞したブリッジマン博士によって20世紀の中頃に発見された現象で、この物質に数万気圧を超える圧力を加えた後に常圧に戻すと、加えた圧力に応じて約20%増までの任意の密度をもつ状態で回収されるというものです。 SiO2ガラスは、窓ガラスの主成分でもあり、理化学実験等にも様々な用途のある実用材料です。 しかし、永久高密度化を始めとするガラス固有の現象の理解は構造情報の取得の困難さなどから十分には進んでおらず、単純な化学組成をもつSiO2ガラスの研究は、ガラス研究の本流として今なお多くの研究者の関心を集めています。

受賞講演で質問に答える若林大佑氏

若林氏は、フォトンファクトリーのビームラインBL-18CおよびAR-NE1Aを利用し、高圧を発生させる装置「ダイヤモンドアンビルセル」と放射光を組み合わせ、研究を進めてきました。 永久高密度化ガラスが、結晶と同様に加減圧に伴って可逆に構造を変化させることを実証し、ガラスであるにも関わらず割れずに大きく変形すること(塑性変形)、および変形後のガラスの構造に大きな異方性が残留すること(残留偏差歪)を発見しました。 さらに、高圧下その場小角X線散乱手法の開発に中心的な役割を果たし、SiO2ガラスの相転移の中間状態においてサブナノメートルスケールの構造不均質が出現すること(二相混合状態)を明らかにしました。 これらの研究では、放射光に加えて、光学顕微鏡観察、ラマン散乱測定など、様々な実験手法が駆使されています。

このように実験によって顕著な業績を収めたのに加え、第一原理分子動力学計算やその結果を機械学習させることによる大規模分子動力学計算、相転移カイネティクスのモデル化、さらには地球科学的な応用として、ケイ酸塩メルトの状態方程式のモデル化やその元となる静的圧縮と動的圧縮のデータの分析でも業績を収めています。

若林氏の挙げた業績はまさに「総合的」というに相応しいものであり、将来を嘱望される新進気鋭の研究者として高く評価されました。

関連情報:日本高圧力学会 2018年度受賞者紹介

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