北村 源次郎:野趣あふれる美猫。上田城で母と運命の出会いを果たし、北村家の猫となったことから、真田信繁の幼名をとって源次郎と名付けられた。
母上:源次郎の母。文系だが、素粒子とスピンに興味がある。昆虫・植物が大好きで、KEK構内で撮った珍しい虫の写真を持ち歩く。
プロフィールはKEKのひと「山を旅して世界を知った 北村節子さん」に詳しい。
KEKからエッセイも。【KEKエッセイ #1】「天才はおもいがけなくやってくる」
拙者は源次郎。北村家の猫である。覚えてますか?
前回の「スピンはめぐる」で、電子の「公転」で説明できない原子スペクトルの分裂を「自転」で説明したというので、小さくガッテンしたつもりだったのですが、スピンの正体はなんなのか、気になって仕方ないんです。
じゃ、その原子スペクトルの分裂についてもう少し話しましょうか。
あるある!私よく長距離走るから。
黄色の光は、排気ガスの中でも光が通りやすいし、経済的だから使われていたらしいね。
自動車の排気ガスは昔に比べてきれいになりましたもんね。
だけど、今日は懐かしの黄色いランプが主役。
もしかしたら、花火の黄色もそう?
そうそう。火薬にナトリウムが入ってると黄色になるね。
電子が軌道から軌道に飛び移るときに余ったエネルギーでしょ!
さすが!イメージできてる。
こんなかんじかニャ?
あら、源次郎。よく知ってるわね。
猫は光を出さないと思うけど、原子はエネルギーを光として放出するんだよね。
磁場をかけたってことね?
黄色い光をスペクトルに分けて見たら、磁場をかけないときよりも広がって見えたんだって。
あ、なるほどね。複数本に分かれると広がって見える。
そう、これも分裂の一つ。
大きさごとに分かれた!
そういうことになるよね。
磁場をかけないときは1つだったものが、磁場をかけたら分かれるんでしょ?
磁場に反応するものって何だと思う?
えーっと、磁石?
そう。
何だか物理っぽくて勉強してる気になるわ(^^)
磁気モーメントは、磁場が大きいほど大きなエネルギーを持つんです。
ちょうど、物体を高いところに置いたときは、低いところに置いたときよりも、大きな位置エネルギーを持つのと似てますね。
磁石を同じ向きで並べておくと、相手の磁石の磁場でひっくり返ろうとする力が働く。
そのとおり。磁気モーメントが持つエネルギーのイメージができたところで、ナトリウムの話に戻りますよ。
もともと磁石…、じゃなくて磁気モーメントに差があった!
そうなりますよね。
あれ?
いや、実はゼーマンとローレンツが解明したのは公転の磁気モーメントによる分裂だけだったんだ。
えーっと、ちょっと整理させてくださいね。
そうです。
うーん、そうですね…。
電子の自転による磁気モーメントを考えに入れると、さらに細かいエネルギーの差を説明できて、磁場中での原子スペクトルの分裂をすべて説明することができたんだよね。
電子の自転による磁気モーメントで二段階目の分裂が説明できた。
その後、この自転のことはスピンと呼ばれるようになって、スピン磁気モーメントという言葉ができた。
へ~、なるほどね~。
いまいち納得できない感じだね。
でもね、「スピンの存在」を確信させるのに、状況証拠一つで十分なの?
他にもたくさん証拠はありますよ。大勢の科学者がああでもないこうでもないといって導き出した結論ですから。
ぜひお願いします。論より証拠ですからね。
スピンの正体に近づいたような、その分余計に謎が深まったようなそんな気分だニャ。