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2019年5月20日、キログラムの定義改定

物構研トピックス
2019年5月20日

1875年にフランスでメートル条約が締結された日を記念して5月20日は世界計量記念日とされていますが、2019年のこの日、国際単位系(SI)の4つの基本単位の再定義が行われました。その中で、質量の単位 kgと物質量の単位 mol の定義改定には、KEK 物構研のフォトンファクトリー(PF)が一役買っています。

1 kgの定義は、金属で作られた「国際キログラム原器」が基準でした。しかし、今回の再定義では、人工物である原器を基準としないことが求められました。例えば、「長さ 1 mは光が一定時間に進む距離である」というように、いつでもどこでも正確な計測が出来さえすれば 1 kgが定まるように、というわけです。さらに、国際キログラム原器を用いる場合以上の精度も要求されました。 世界中の計量学者たちがこの難問に取り組み、日本では、「産業技術総合研究所 計量標準総合センター」が研究を行いました。日本はアボガドロ定数を精度よく求める方法を選び、その中で、放射光を使った精密な測定は、およそ20年に亘ってPFで行われました。

やがて、1 kgの新定義には量子力学で用いられる「プランク定数」が採用されることが決まりましたが、プランク定数とアボガドロ定数の間には厳密な換算式があり、2つの定数は世界中で競うように算出されました。そして2018年、集められた数値から有効数字9桁のプランク定数が「不確かさ」のない定義値として決定され、新しいkgの定義が完成しました。PFでの測定結果が活かされた日本が提出した数値も、その決定に寄与しています。

PFでの実験前、装置の温度上昇を避けるため暗がりの中で作業する研究者たち

定義改定について詳しくは:産業技術総合研究所 キログラム定義改定特設サイト「キログラムが変わるとき」

関連記事:物構研ハイライト 国際単位系(SI)kg再定義の舞台裏(2018/11/9)