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茨城県内の日本最古の鉱床で発見された鉱物が、フォトンファクトリーにて新鉱物と判明

物構研トピックス
2019年8月 9日

東北大学・海洋研究開発機構・神戸大学・千葉工業大学・九州大学・富山大学・国立科学博物館の研究グループが、茨城県の日立鉱山から珍しい化学組成を持つ鉱物を発見、フォトンファクトリーでの単結晶X線回折実験によって、新しいタイプの結晶構造をもつ新鉱物であることが分かりました。新鉱物は「日立鉱(Hitachiite)」と命名されました。

日立鉱山には、日本最古と言われるおよそ5.3億年前に生成された鉱床があり、岡山大学の加瀬 克雄 名誉教授が1970年代に坑道内から採取した鉱石試料を、国立大学法人 東北大学大学院 理学研究科 栗林 貴弘 准教授、同大学 総合学術博物館 長瀬 敏郎 准教授、国立研究開発法人 海洋研究開発機構 野崎 達生 グループリーダー代理、国立大学法人 九州大学 石橋 純一郎 准教授、国立大学法人 富山大学 清水 正明 名誉教授、独立行政法人 国立科学博物館 門馬 綱一 研究主幹による共同研究グループが詳細に調べました。
発見された日立鉱の理想化学式はPb5Bi2Te2S6(Pb:鉛、Bi:ビスマス、Te:テルル、S:硫黄)です。 鉱物の分類は、化学組成と結晶構造の類似性でグループ化されますが、日立鉱の発見によりグループの分類自体が議論されることになり、結晶構造の分析が必要となりました。 しかし、問題の鉱物が重金属元素(PbとBi)を含み、かつ、極微小サイズ(最大で100 μm程度)であったため実験室では分析が難しく、フォトンファクトリーの放射光を使うことになったものです。 単結晶X線回折実験により、日立鉱が新しいタイプの結晶構造であることが判明しました。
今回使用されたビームラインは、単結晶構造解析ステーション BL-10Aです。 BL-10Aは、ユーザーによって組織されるワーキンググループがビームラインの管理・運営・ユーザーサポートに参加するユーザーグループ運営ステーションの一つであり、熊本大学 吉朝 朗 教授を代表とする鉱物・合成複雑単結晶構造解析ユーザーグループが、所内担当者の熊井 玲児 教授とともに運営しています。

日立鉱は、国際鉱物学連合の新鉱物、鉱物の記載や分類に関する委員会において審査され、2018年6月に承認を受けました。茨城県からの新鉱物の発見は初めてです。
この研究成果は、鉱物学分野で最も権威ある英国の学術雑誌「Mineralogical Magazine」に掲載されました。


東北大学のプレスリリース「日本最古の鉱床から新鉱物を発見!! 〜放射光X線回折実験により、新しいタイプの結晶構造と判明〜」

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