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高分解能立体構造解析に基づいた、多剤耐性菌や歯周病菌に特異的な阻害剤の探索に成功

物構研トピックス
2019年9月24日

岩手医科大学薬学部の阪本泰光准教授、關谷瑞樹助教、昭和大学薬学部の田中信忠准教授、合田浩明教授、長岡技術科学大学の小笠原渉教授、長岡工業高等専門学校の鈴木義之特命助教、JAXAの山田貢主任研究開発員らの研究グループは、多剤耐性菌や歯周病菌の生育に必須の「ジペプチジルアミノペプチダーゼ (DPP)」と化合物複合体の立体構造に基づき、これらの菌の増殖を抑制する化合物を見出しました。

研究グループは、2015年に発表した歯周病菌DPP11の立体構造の解明に続き、DPP11と化合物複合体の立体構造に基づいて、歯周病菌の増殖を抑制する化合物を見出しました。また、その化合物は、多剤耐性菌DPP11の働きも阻害し、代表的な微生物である大腸菌の増殖には影響がなく、歯周病菌に強く作用することを明らかにしました。本研究は、歯周病菌や多剤耐性菌などに特異的な抗菌薬の開発に結びつく成果です。

この成果は、PFのBL-17AやSPring-8における高分解能のX線結晶構造解析と、化合物データベースを活用したインシリコ (in silico) 探索の相補的活用によるものです。また、国際宇宙ステーション (ISS)「きぼう」において無重力下でタンパク質の結晶化を行ったことにより高品質な結晶が得られたことが、構造解析の成功の鍵となりました。探索された化合物とDPP11との複合体の構造(下図右)は、2016年10月に大西卓哉宇宙飛行士がセットアップした結晶から得られたものです。

X線結晶構造解析とin silico探索の相補的活用

詳しくは… 岩手医科大学のプレスリリース:「多剤耐性菌による感染症克服を目指した新しいタイプの抗菌薬の創出に向けて」(2019.9.19)

論文情報:Yasumitsu Sakamoto, Yoshiyuki Suzuki, Akihiro Nakamura, Yurie Watanabe, Mizuki Sekiya, Saori Roppongi, Chisato Kushibiki, Ippei Iizuka, Osamu Tani, Hitoshi Sakashita, Koji Inaka, Hiroaki Tanaka, Mitsugu Yamada, Kazunori Ohta, Nobuyuki Honma, Yosuke Shida, Wataru Ogasawara, Mayumi Nakanishi-Matsui, Takamasa Nonaka, Hiroaki Gouda and Nobutada Tanaka
“Fragment-based discovery of the first nonpeptidyl inhibitor of an S46 family peptidase”,
Scientific Reports, 9, 13587 (2019)