茨城県日立市にある日立シビックセンター科学館で、2/11(祝)午後、大人のためのサイエンス「チョコレイト・サイエンス ―物理で美味しく!―」が開催されました。
冬期に開催することが多いチョコレイト・サイエンスでは当日キャンセルはつきものなのですが、今回は事前予約をした25名全員が参加し、小学6年生から大人まで、遠くは東京からの参加者も数組ありました。科学が好き、チョコレート菓子作りのコツを知りたいという理由で参加した人も多くいたようです。
講師は、フォトンファクトリーでチョコレートに関する実験を行っている広島大学 上野 聡 教授の後輩にあたる物構研 中性子科学研究系の山田 悟史(やまだ のりふみ)助教が担当しました。
まず、講師からチョコレートは何でできているかの解説がありました。テーブルの上には、チョコレートの原料である、カカオ豆・ココアバター・カカオマスも置いてあります。ココアバターは常温では分子が規則正しく並んだ結晶であり、チョコレートの物理的性質を決めています。今日はココアバターの結晶を作り分けましょう、という説明を、参加者はみな熱心に聞いていて関心の高さが伺えました。
実験は、4~5人のグループに分かれて行いました。チョコレートを湯せんで融かして型に流すだけの「単純冷却」、へらで混ぜながら調理用温度計を使って温度制御をする「テンパリング」、融かしたチョコレートに刻みチョコを融かしこむ「種結晶法」の3種を作りました。 会場は料理室で、参加者もスタッフもエプロンに三角巾姿ですが、デジタル温度計とにらめっこして熱の伝わり方を考えながら実験しているところにおもしろさを感じたという方もいました。
チョコレートが冷え固まるのを待つ間に、講師から3つの作り方によってチョコレートの中でどんな違いが起こっているのか、解説がありました。ココアバターの結晶の形は融点の低い順にⅠ型からⅥ型まで6種類もあって、融点が高い結晶形ほどできにくいこと、そのうちⅤ型だけがパリっとしたスナップ性や口どけの良さを併せ持つ結晶形であること、温度制御や攪拌によってⅤ型だけができるように工夫した方法がテンパリング法で、種結晶法は結晶ができるときに近くにある結晶に倣うという性質を利用していることなどが説明されました。また、ココアバターの結晶の形を知るためにフォトンファクトリーの放射光が使われていることや、山田講師が研究を行っているJ-PARCについても紹介がありました。
冷蔵庫から出したチョコレートが配られると、参加者たちは3種のチョコレートの光沢や融けやすさ、甘味やカカオの風味の感じやすさを五感をフルに使って比べました。
開催後のアンケートでは、初めからとても興味があった方を除くすべての方がチョコレートの科学に対する興味が増したと回答し、「生活に関わりのある題材のイベントをまた開催してほしい」「KEKにも興味がわきました」というコメントもありました。
日立シビックセンター科学館は、施設整備のため、来年度約1年間休館となります。
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