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チョコレイト・サイエンス5周年記念「チョコレート学入門」を開催しました

物構研トピックス
2019年12月19日

私たちにはとても身近な食べ物ですが、まだまだ謎が多いと言われるチョコレート。チョコレート研究が盛んなヨーロッパでは、今や加速器から出るX線「放射光」なしでは最先端の研究はできないと言われているそうです。
世界で2番目に放射光を使ったチョコレート研究を始めたのが、広島大学大学院 統合生命科学研究科/生物生産学部の上野 聡(うえの さとる)教授です。その舞台はもちろんKEK物構研のフォトンファクトリーでした。上野教授は今でも学生と一緒につくばに通い実験を続けています。

関連サイト:広島大学 「教授に聞く」 上野 聡 教授に聞きました!

上野教授が放射光で解明したチョコレートの油脂成分、ココアバターの結晶形の違いを、人の感覚で確かめられるようにしたワークショップが物構研のチョコレイト・サイエンスです。 チョコレイト・サイエンスは、物構研で広報を担当していた餅田 円(もちだ まどか)さん(現所属:東京大学 物性研究所)をはじめとした広報スタッフ・研究者・技術者の混合チームで企画され、2014年につくば市内で初めて開催されました。以来5年間、科学館などでの開催を重ね、850余名にご参加いただきました。
今年で丸5年となることから、12月14日、上野教授のお膝元である広島大学 東広島キャンパスにおいて「チョコレイト・サイエンス5周年記念 チョコレート学入門」を開催しました。イベントは講演会とワークショップの2本立てで、午後のワークショップは会場を2つに分け、広島発のチョコ臼「ショコラミル」体験との並行開催となりました。 当日は未就学児から大人までおよそ140人が参加し、チョコレート三昧の一日を過ごしました。

このイベントの主催は、KEK 物質構造科学研究所(茨城県つくば市)と東京大学 物性研究所(千葉県柏市)、共催は広島大学(広島県東広島市)と東京フード株式会社(つくば市)です。また、東広島市と東広島市教育委員会のご後援をいただきました。イベント運営にあたっては、広島大学 上野研究室の学生の皆さんにご協力をいただきました。
広島大学 東広島キャンパスは、多くの酒蔵が密集しレンガの煙突が立ち並ぶ東広島市西条の町からバスで20分ほどのところにあります。

イベント案内:KEK 物構研 チョコレイト・サイエンス5周年記念「チョコレート学入門」

プレスリリース:広島大学ほか チョコレイト・サイエンス5周年記念イベント チョコレート学入門 開催のお知らせ

酒蔵の煙突が立ち並ぶ西条の朝
広島大学 学士会館 前
チョコレート学入門 受付

チョコレートがもっとおいしくなる講演会

講演会では、まず初めに、物構研 フォトンファクトリー 宇佐美 徳子(うさみ のりこ)講師から開会の挨拶があり、このイベント開催の経緯について説明がありました。

続いて、広島大学においてチョコレートの研究で博士号を取得した株式会社 明治 大阪工場長の古谷野 哲夫(こやの てつお)氏が「Farm to Bar~カカオ生産現場からチョコレートを知る~」と題してお話をしました。 チョコレートの歴史を紐解いた後、Farm to Bar という言葉について説明がありました。 近年、Bean to Bar(製造者がカカオ豆から板チョコレートまでを、一貫して手がけるスタイル)という言葉をよく耳にしますが、これはチョコレート会社が長年やってきたこと。 そこから一歩進んで、カカオ農家への支援や指導を行って、安定したカカオ農業による高品質なカカオ豆を使ってチョコレート製品を作る Farm to Bar(カカオ農家から板チョコレートまで)を実践してきた自身の経験を語りました。

関連サイト:株式会社 明治 BEAN to BAR から FARM to BAR へ

続いて、上野教授が「『チョコレートの分子構造がおいしさを決める』というタイトルは難しすぎるので、今日は分子構造の話はしません」と前置きし、おいしいとはどういうことか、特に食感について話しました。 参加者には広島みやげの定番「もみじまんじゅう」が2種類配られ、製法によってまんじゅうのテクスチャ―(質感)が違うと食感が違っておいしさが違うことを実体験しました。
そして、チョコレートの食感はココアバターによって決まるという説明がありました。ココアバターの結晶形は複数ありますが、それぞれの結晶形によって融点が異なり、結晶形Ⅴ型は融点33℃付近で一気に融けます。つまり、口に入れた瞬間に融け、しかもパキッと割れるスナップ性をもつのでおいしいチョコレートになることなどを話しました。

講演後の会場からはチョコレートに関する質問が相次ぎ、古谷野氏を指導し上野教授とともに共同研究をしていた広島大学 佐藤 清隆(さとう きよたか)名誉教授や、古谷野氏が観客席から回答するなど、大いに盛り上がりました。

関連記事:KEKハイライト 2013.2.12 チョコレートを美味しくする物理

宇佐美講師が示した5年前のイベントポスター
古谷野氏はチョコレート柄のネクタイで登場
講演会場のようす
スタッフがもみじまんじゅうを配っています
質問に答える上野教授
古谷野氏へマイクを渡す佐藤名誉教授

チョコレートのワークショップ①「チョコレイト・サイエンス」

チョコレイト・サイエンスは、小学4年生以上を対象に、通常開催の倍近い54名が参加して開催されました。講師を務めた 東大 物性研 餅田さんが上野教授の放射光を用いた研究を基にしたココアバターの結晶の特性を話し、また、東京フード株式会社の路川 聡一(みちかわ そういち)さんから、カカオポッド(カカオ豆のさや)の模型などを使ったカカオの解説がありました。
参加者たちは11のテーブルに分かれて、融かした同じチョコレートを単純に冷ます方法と、一度温度を下げてまた温めてから冷ますテンパリングの2つの方法で型に流し込みました。各テーブルには、物構研・物性研のスタッフのほか、東京フードの研究員と上野研究室の学生がついて、作業の指導をし、チョコレートについての質問に答えていました。
チョコレートが冷蔵庫で固まるのを待つ間、餅田さんからテンパリングの意味についての説明があり、結晶の違いによる融点の違いを活かしてⅤ型の結晶を作っていたことが解説されました。また、路川さんの「ちょこっとチョコレートクイズ」のコーナーでは、チョコ豆知識が次々と登場しました。
その後、それぞれのテーブルで作ったチョコレートが配られると、参加者たちは2つのチョコレートの違いを見た目や触感で確かめたあと、実際に食べてみて食感や味の感じ方を比べました。そして、ワークシートに従って光沢の有無・溶けやすさ、甘味・カカオの風味の感じ方について2つのチョコレートを分析し、チャートに表しました。それぞれの考察結果を一つの表に張り出してもらったところ、2つのチョコレートの特性の違いが分布図に見事に現れました。

参加者に語りかける餅田さん
11テーブルに分かれて座りました
カカオポッドを見せる路川さん
発泡スチロールにはお湯、ボウルには水が入っています
チョコ型に流し込んでいるところ
冷蔵庫の中はこんな感じ
チョコレートクイズの時間
2種類のチョコを割って比べています
考察結果をチャートに

チョコレートのワークショップ②「ショコラミル」

ショコラミルとは、広島大学の佐藤名誉教授が発案、地元の石材店と共同開発したカカオ豆を挽くための石臼です。これを使うと砕いたカカオ豆から液体のチョコレートが取り出せます。
ショコラミルのワークショップでは、小学生から大人まで広島大学の留学生を含む約50名が参加し、様々なチョコレートを作りました。 みんなで割って食べる大きな板チョコ、石臼から出てきたチョコレートをマシュマロやオレンジピールに直接つけて味わう「カカオフォンデュ」、紙カップの生チョコ作りなど盛りだくさんの内容でした。
ワークショップ開催には佐藤名誉教授が代表を務める一般社団法人 ショコラミル-インターナショナルの全面的なご協力をいただきました。

ショコラミルを挽いているところ
カカオ豆2種を食べ比べました
臼の中は実はこうなってます!
紙カップ生チョコの解説をする佐藤先生
冷やした板チョコを受け取りに、冷蔵庫前は大混雑
板チョコを配る前に佐藤先生が説明をしています

今回のイベントでは参加者にアンケートへのご協力をお願いし、その中で「チョコレートの科学への興味がイベント前後でどう変わったか」について教えていただきました。 [全くない・ほとんどない・少しある・ある・とてもある] の5段階で、イベント前とイベント後を矢印で結んでもらうという方法です。
その結果、ほとんどの方が右向きの矢印、つまり「より興味が増した」という回答、あるいは [とてもある] にだけ印をつけてくださいました。

物構研では、身近な題材から、楽しみつつ科学の面白さに触れてもらえたら、という想いで、これからも教育活動を続けていきます。今後とも物構研のチョコレイト・サイエンスをどうぞよろしくお願いいたします。

これからの物構研チョコレイト・サイエンス開催予定:


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