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高エネルギー加速器科学研究奨励会 西川賞を物構研関係者がダブル受賞

物構研トピックス
2020年3月 5日

高エネルギー加速器科学研究奨励会 西川賞は、加速器科学関連の研究分野において偉大な業績をあげられている西川 哲治 先生の功績を讃えて設けられた賞で、加速器利用に関する実験装置の研究について独創性に優れ、国際的に高く評価されている研究に対して与えられます。
2月20日、2019年度の表彰式がアルカディア市ヶ谷にて開催されました。 今年度の西川賞は2件で、ともに物構研での独創的な装置技術開発とその応用研究に関する成果です。 

表彰式にて 写真提供:高エネルギー加速器科学研究奨励会
前列右から4番目が 産総研 満汐 孝治 研究員、3番目が 物構研 足立 伸一 教授
後列右端が東京理科大の長嶋 泰之 教授
前列左端が物構研でもお世話になっている 熊谷賞受賞の 有限会社 双葉工業の深作 正博 代表取締役

西川賞「ポジトロニウム負イオンの光脱離および共鳴光脱離の観測」

 満汐 孝治(みちしお こうじ)研究員:産業技術総合研究所(産総研)分析計測標準研究部門 X線・陽電子計測研究グループ

KEK 物構研 低速陽電子実験施設では、KEK 加速器第五研究系 LINACグループ、東京理科大の長嶋 泰之 教授のグループ等の協力を得て研究が進められており、その成果は広く認知されてきています。
長嶋研究室出身の満汐研究員は、国際的に高く評価されている「ポジトロニウム負イオンの光脱離および共鳴光脱離の観測」で中心的な役割を果たし、計測装置開発、レーザーとの同期観測システムの構築や実験の実施、解析の面で活躍してきました。
「ポジトロニウム負イオン」とは陽電子1個と電子2個が束縛し合っている複合粒子ですが、このイオンを電場で加速した後にレーザー励起によって電子を1個光脱離させて、エネルギーが可変な中性ポジトロニウムビームを作ることに成功しました。また、理論的な予想しかなかった共鳴脱離過程を実証しました。これらは応用と基礎研究にまたがる非常に独創的な研究です。
今後、産総研内の陽電子装置のアップグレードのみならず、低速陽電子実験施設の利用などにおいても中心的な役割を果たしていくことが期待されています。

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西川賞「放射光X線による物質構造の超高速ダイナミクス計測法の開発と応用」

 足立 伸一 教授、野澤 俊介 准教授:物構研 フォトンファクトリー

KEK 物構研のフォトンファクトリー アドバンストリング(PF-AR)は、世界で類を見ない大強度パルス放射光源です。 足立教授、野澤准教授らは、この光源の特徴を活かしたポンプ&プローブ方式の超高速時間分解X線構造解析手法を開発し、応用研究を進めてきました。 100ピコ秒のスケールでの時間分解構造解析手法としてのPF-ARの有用性を実証し、応用研究を進めただけでなく、彼らの研究のノウハウがその後の大型放射光施設 SPring-8等での構造解析実験に影響を与えました。 また、X線自由電子レーザー(XFEL)施設 SACLAを用い、より高速(500フェムト秒)領域の時間分解構造解析にも成功しました。それまで比較的低エネルギー領域の分光を中心としていた放射光の時間分解実験を、物質の具体的な動的観察にまで発展させた功績は大きく、光誘起相転移に関する研究は国際的にも高く評価されています。

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高エネルギー加速器科学研究奨励会 褒賞 - 2019年度選考結果