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日比谷カレッジ×KEK「電子の悩みが新材料を生み出す~量子ビームで見るナノ構造〜」を開催しました

物構研トピックス
2020年10月30日

10月23日金曜日の夜、東京都千代田区の霞ヶ関駅にほど近い日比谷図書文化館にて、講演会「KEK 物理学シリーズ Vol.3 電子の悩みが新材料を生み出す~量子ビームで見るナノ構造~」が開催されました。この講演は、日比谷図書文化館がビジネススキルアップや江戸・東京の歴史文化、アートなど多彩なテーマで様々な「学び」と「交流」の場を創出するために開催している「日比谷カレッジ」の一講座です。KEKの職員が講師を務める「KEK物理学シリーズ」の3回目は、物構研 量子ビーム連携研究センターの 村上 洋一 教授が登壇しました。当初、春に開催の予定でしたが、COVID-19の影響で延期になったものです。

日比谷図書文化館の外観

当日はあいにくの雨模様にも関わらず、多くの参加者が会場に足を運びました。感染対策として入館時には体温測定や手の消毒、マスク着用が義務付けられたほか、会場の収容人数の1/3以下の60人を定員とし席と席の間隔を空け、講師席にはアクリル板が設置されました。また、マイクを介した感染防止のため質疑応答の時間は設けられず、質問したい方は講演後に直接講師に尋ねるという形がとられました。

講演では、電子発見から電子軌道解明までの歴史を追いながら「電子とは何か」についての解説があり、講演タイトルの「電子の悩み」について話が進みました。電子は自由に動き回りたいのですが、他の電子に近づくと反発し合ってしまうので、じっとしているべきか動き回るべきか悩んでいるというわけです。研究者の間では「局在と遍歴の狭間」と呼ばれる物性物理学の一大分野の話題が、「電子の電荷はなぜ負なのか?」などのトリビアを織り込みながら進みました。また、電子を観測する手段としてKEKの量子ビーム(フォトンファクトリーの放射光・J-PARC MLFの中性子)が紹介されました。
後半では電子の悩みの中で最も注目されている現象として「高温超伝導体」が取り上げられ、近年繰り広げられている新材料開発競争と、講演の10日前に発表されたばかりの「超高圧下での水素化物の室温超伝導発見」の紹介もありました。

講演の最後に、大科学者たちのエピソード(例えば、電磁誘導の発見後、実験を見た財務大臣に「で、それは何の役に立つのかね?」と問われて、発見者であるマイケル・ファラデーは「生まれたばかりの赤ちゃんは、何の役に立ちますか?」と答えたという)などが紹介され、科学とは何か、基礎研究がいかに大切かを考えさせる時間となりました。
講演後の会場では多くの参加者が順番を待って質問していました。終了後のアンケートでは「初めて伺うことばかりで興味深く楽しい時間を過ごせました」、「科学にもっと触れていきたいと思った」などの感想が寄せられたそうです。
この講演のようすは、YouTube KEKチャンネルにて公開される予定です。


開催案内:千代田区立図書館 日比谷カレッジ KEK物理学シリーズvol.3 電子の悩みが新材料を生み出す~量子ビームで見るナノ構造~


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