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小菅 隆氏が日本放射光学会功労報賞を受賞

物構研トピックス
2024年3月12日

物質構造科学研究所 放射光実験施設 技術調整役の小菅 隆(こすげ たかし)主任技師が、第11回日本放射光学会功労報賞を受賞しました。この賞は、個人の放射光利用技術・支援の長年にわたる功に報いて授与される賞で、1月10日に姫路市で開催された第33回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムにおいて授賞式が行われました。

img01.jpg 授賞式にて 足立 伸一 学会長(左)と小菅氏
img02.jpg 授賞式でのスピーチのようす

小菅氏は、フォトンファクトリー(PF)が初めて光を発生した直後の1982年4月にKEK(当時 高エネルギー物理学研究所)に着任して以来、PFのビームライン管理システムや制御システムの開発・運用・管理・利用支援・高度化に関わってきました。また、各種サーバー、ネットワークなどのITインフラの整備、放射線安全、ビームライン安全検査などに携わり、長年施設を支えてきました。

数多くの業績の中でも特筆すべき業績として、安全に放射光実験を行うためのビームラインインターロックシステムの開発、そしてその開発を通じてネットワーク型の制御システムSTARS (Simple Transmission and Retrieval System) を独自に開発したことが挙げられます。PFに共同利用実験に訪れる研究者は、年間3000名にものぼり、所属も研究対象もさまざまで、研究手法も多岐にわたっています。小菅氏の開発したSTARSは、OSやプログラミング言語に依存せず、シンプルで、誰でも自由にダウンロードして使用することができ、システムの共通化に大きく貢献しました。その汎用性の高さから、ビームラインの制御だけでなく、実験室のモニタリングや、装置のリモート操作などにも応用されています。利用するユーザーのことを一番に考えた心配りを垣間見ることができるこのソフトウェアは、現在ではPFやPF-AR(アドバンストリング)の30ものビームラインに導入されているだけでなく、国内の放射光関連施設においても広く使われています。

また、技術交流会の主催や国際会議への協力、DESY(ドイツ電子シンクロトロン)との共同研究など、人材育成や国際協力、加速器技術の普及活動などへの貢献も高く評価されました。若手の教育にも熱心で、ムードメーカーの小菅氏の周りにはいつも人が絶えません。


小菅氏からひとこと

加速器のことも放射光のことも何もわからない状態でKEKに着任し、PFのインターロックを担当することになり、周りの方からいろいろなことを教わりながらやってきました。

その頃、「君が作った装置をみんなが使ってくれるのって、いいでしょ」と言われ、それがずっと技術者としての強いモチベーションとなっています。インターロックについては、安全上非常に大切なものなので、妥協は絶対にしないように心がけてきました。今はこのスピリッツを若い人になんとか伝えようとしているところです。2002年ごろからはビームラインの制御系もさせていただき、多くの方に使っていただけるようになりました。決して自分だけの力ではなくて、皆さまの支えがあって、やっとここまで来られたと思っております。とても感謝しています。

img03.jpg 居室にてSTARSのインターフェースを説明する小菅氏
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