2026年6月20日~21日の2日間にわたり、大強度陽子加速器施設 J-PARC(茨城県東海村)の物質・生命科学実験施設(MLF)ミュオンD1エリアにおいて、中高生によるミュオンビーム実験が行われました。
実験に参加したのは、加速キッチン合同会社の支援を受ける11名の中高生です。学校や学年の枠を越えて集まった生徒たちが、自ら立案した研究テーマの実現に向けて挑戦しました。今回は、ミュオンビームを用いた実験を希望する生徒から提案された課題の中から5件が採択され、グループでの実験に臨みました。
1日目、生徒たちは東海村に到着後、日本原子力研究開発機構(JAEA)の研究用原子炉JRR-3を訪問しました。ここで生み出される中性子ビームを利用した研究やその活用事例について説明を受け、研究炉室や実験装置が設置されたビームホールを見学しました。
物質・生命科学研究に利用されている中性子・ミュオンについて学ぶとともに、普段は立ち入ることのできない研究施設を見学する貴重な機会となり、生徒たちは研究者に積極的に質問を投げかけていました。
その後、実験を行うMLFのミュオン物質生命科学実験装置D1を見学し、実験装置の設置に向けて入念な「下見」を行いました。放射線管理区域内での作業は、放射線業務従事者として登録されている大学生・大学院生のメンタースタッフが担当するため、生徒たちは実験指令室となる会議室に戻った後も、装置の設定や実験手順について詳細な打ち合わせを重ねました。
2日目の朝、割り当てられたビームタイムが始まると、会議室と実験室をオンラインでつなぎ、実験がスタートしました。
実際にミュオンビームが照射されると、想定どおりに進まない部分もあり、さまざまな調整が必要となりました。しかし生徒たちは試行錯誤を重ねながら、限られた時間を最大限に活用しようと集中して実験に取り組みました。
今回は5つの異なる研究課題が実施され、それぞれ実験装置や測定手法も異なりました。それでも生徒たちはグループの枠を越えて協力し合い、実験室と会議室でサポートするメンタースタッフの支援を受けながら、必要なデータの収集を無事に完了しました。
実験終了時には、誰からともなく拍手が起こりました。それまで張り詰めていた表情も和らぎ、生徒たちの顔には大きな達成感と笑顔があふれていました。
実験終了後、加速キッチン合同会社代表の田中香津生先生から、生徒たちへ「今回の実験で得た経験や成果を、さまざまな機会を通じて発表してほしい」とのメッセージが贈られました。また、「記憶が新しいうちに、ほかの高校生にも伝わるようなレポートをまとめるように」とアドバイスがありました。
生徒たちにとって、自ら研究テーマを立案し、プロポーザルの作成から本格的な実験の実施までを経験する貴重な機会となりました。
今後は、論文執筆や学会発表、各種イベントでの成果発表を予定しています。