3月29日、30日機構内にて、KEKと北海道大学の連携シンポジウムが開催されました。KEKと北海道大学は2010年に締結した連携協定の下、連携ワークショップ等を開催してきました。本シンポジウムもその一環として行われ、今回は初めてKEKで開催されました。
開会にあたり、KEKの野村昌治教授より互いの持っている施設や情報などを共有し、新しい研究のアイディアを生み出すなど、有意義な議論をしていただきたいとの挨拶がありました。29日の第一部は構造生物学をテーマに行われ、北海道大学における最新の研究として酢酸菌の合成するバクテリアセルロースや、αディフェシンによる自然免疫に関する発表がありました。一方、そのようなタンパク質の構造を原子レベルで解明するための手法として、KEKや筑波大学における取り組みとしてタンパク質X線結晶構造解析および溶液散乱や軟X線顕微鏡、平成24年度より始まった創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業等についての発表がありました。
第二部はソフトマターを中心テーマとし、北海道大学からダブルネットワークゲル(DNゲル)と呼ばれる新素材に関する発表が行われました。この新しいゲルは高強度性に加えて切断しても自己修復するという非常に興味深い性質を有しており、実際に人工軟骨として利用するための取り組みについても紹介されました。また、KEKからは物質と生物をつなぐという観点で興味深い生き物のように動く油滴のしくみについての研究、および塩が水と油の混合を促進し、界面活性剤のように振る舞うという研究に関して発表が行われました。
30日は東海キャンパスにて、J-PARCのハドロン実験施設、ニュートリノ実験施設、物質・生命科学実験施設を見学しました。
2010年に行われた触媒のワークショップ、2011年8月のハードマター系のワークショップや昨年秋の連携講義に続き、今回は生命科学、ソフトマター分野でも研究交流が深められました。これらを契機にさらに共同研究の促進が期待されます。