第14回原子衝突学会若手奨励賞を満汐孝治(みちしおこうじ)東京理科大学助教が受賞しました。この賞は、原子衝突および関連分野で優れた研究を行った若手研究者に対して贈られるものです。表彰式は、11月16、17日に理化学研究所で開催される原子衝突学会年会にて行われる予定です。
ポジトロニウム負イオンの光脱離の模式図。
画像提供:長嶋研究室
受賞対象の研究は「ポジトロニウム負イオンの光脱離とポジトロニウムビーム生成への応用」です。満汐氏は東京理科大学大学院理学研究科在学中、長嶋泰之教授の指導のもと、高エネルギー加速器研究機構低速陽電子実験施設の陽電子ビームを利用して、陽電子1個と電子2個の束縛状態であるポジトロ ニウム負イオンの研究を行ってきました。研究では、ポジトロニウム負イオンにレーザー光を照射し、電子1個を剥ぎ取って光脱離を引き起こす研究を世界に先駆けて成功させました。 またこの手法を利用して、生成が難しかったエネルギー可変ポジトロニウムビームの生成を成功させました。
この成果はポジトロニウム負イオンの性質解明の上で重要な研究です。 また今後、ポジトロニウムビームを用いた物性研究に利用されることが期待されています。
電子と陽電子の束縛状態(複合粒子)。構成要素である電子と陽電子は対消滅してγ線になる。75%はオルソポジトロニウムと呼ばれる状態で、真空中では142ナノ秒の平均寿命で自己消滅して3本のγ線を生じ(3光子消滅)、残りの25%はパラポジトロニウムと呼ばれる状態で、真空中では0.125ナノ秒の平均寿命で自己消滅して2本のγ線を生じる(2光子消滅)。