フォトンファクトリー(PF)ユーザーの佐藤 宗太氏(東北大学原子分子材料科学高等研究機構/ERATO磯部縮退π集積プロジェクト 准教授)が平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰・若手科学者賞を受賞しました。
受賞対象となった業績は、「生体分子インターフェースの精密合成に関する研究」です。タンパク質は、鎖状につながったアミノ酸分子が複雑に折りたたまれて機能を果たしますが、このときの立体構造は一義的に決まります。つまり、最も安定な相互関係になるように、自発的にあるひとつの構造を取るのです。さらにタンパク質が自己組織化することにより、ウイルスの殻構造のような巨大な構造まで自然に作り上げてしまいます。
タンパク質を丸ごと閉じ込めた球状物質
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ウイルスの殻構造は、内部に核酸やタンパク質を包み込む、直径数10 nmにも達する巨大な中空構造です。佐藤さんは、このような自己組織化を人工的に起こして、ナノサイズの空間を持つ構造を精密に作り上げる研究に携わってきました。最近では、中空構造の中にタンパク質などを閉じ込めることにも成功しています。このようなナノ構造が設計どおりできているかどうかを確認するために、佐藤さんはPFやSPring-8において、放射光X線構造解析を行なっています。特に、重金属を含む巨大分子の構造を見るためには、PF-ARの高エネルギーX線が威力を発揮しました。また、高輝度の放射光を用いることにより、自己組織化の過程を動画のように追うこともでき、自己組織化の仕組みに迫ることが可能です。
「ナノサイズのカプセル」には、さまざまな分野への応用が考えられます。この研究によりカプセルを精密に設計できる道が拓かれ、大きな期待が寄せられています。