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物構研の教育活動 CUPAL 放射光利用技術入門コース~第7回 X線イメージング~

物構研トピックス
2018年6月21日

2018年6月12日~14日に、フォトンファクトリー(PF)にて、Nanotech CUPAL N.I.P.「第7回 放射光利用技術入門コース」が開催されました。 今回はX線イメージングがテーマで、参加者は大学院生を中心に10名でした。

初日は座学で、放射光の特長や基礎について 小林 克己 KEK名誉教授、放射光を利用した代表的な分析手法について 飯田 厚夫 KEK名誉教授、 X線イメージングの手法と事例について 矢代 航 東北大学准教授、X線トポグラフィの手法と事例について 秋本 晃一 日本女子大学教授から講義を受けました。

2日目からは2班に分かれ、PFのビームラインBL-14CでX線イメージングの、BL-20BでX線トポグラフィの実習を行いました。 講師は、それぞれ物質構造科学研究所 放射光科学第二研究系 兵藤 一行 准教授、 放射光科学第一研究系 杉山 弘 助教です。 2日間とも午前と午後で入れ替わり、2班とも同じ実習を行いました。

X線イメージング実習

X線イメージングでは、画像のデジタルデータで濃度を比較し、被写体の密度を比較することができます。 実験用に、医療機関で血管系に注射してX線の画像診断に用いる造影剤を水で様々な濃度に薄めた溶液を作り、様々な濃度の造影剤を試料ホルダーに流し込んで撮影しました。 また、身近な食品や植物などを試料台に乗せ、透過像を撮り、回転させてCT撮影しました。
煮干し、菓子、松ぼっくりや、造影剤を吸った植物、集積回路などを観察しました。
右図は、KEK構内に生えていたネジバナに造影剤を吸わせたものの透過像です。2枚の図をつなぎ合わせてあります。

化学実験室で試料を準備中
濃度の異なる造影剤などの試料
モニターを注視する参加者たち
試料台に静置されたネジバナ

X線トポグラフィ実習

実習では、半導体SiCの欠陥の撮影を行いました。 X線トポグラフの撮影には1 µm程度の分解能が必要で、CCDカメラでは十分な分解能が得られない場合があるため、原子核乾板と呼ばれる特殊な仕様の銀塩写真乾板に撮影します。 通常のX線フィルムと同様に、暗室内で現像・定着させるという工程が必要になります。
まずビームラインの説明を受けた後、各自がそれぞれ撮影と現像を行いました。 実験ハッチ外のモニターで試料の角度を調整し、実験ハッチを開けて乾板の入ったカセットを入れ、ハッチの外に出て露光させ、撮影したカセットを取り出して実験ホール内の暗室に移動、現像します。 暗室作業は初めてという参加者も多く、貴重な体験となったことでしょう。ある参加者は、大量のデータをとるのは大変な手間と時間がかかることを実感したと話していました。

モニターを注視する参加者たち
鉛ガラス越しの実験ハッチ内
ハッチ内に入るためロックを解除
ハッチ内の実験装置
暗室で現像の準備中
現像と乾燥後の原子核乾板

3日間のコースの初日には、交流会がありました。 同じ目的で集まった研究者同士、和気あいあいと過ごしたそうです。 今まで交流がなかった他機関や他分野の研究者と知り合うことで横のつながりができ、 近い将来PFのユーザー同士として顔を合わせるかもしれませんし、異分野間の共同研究のきっかけとなるかもしれません。 参加者のみなさんのご活躍を期待しています。

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