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第1回 文理融合シンポジウム「量子ビームで歴史を探る」を開催

物構研トピックス
2019年8月19日

7月27日~28日に、東京都台東区上野公園の国立科学博物館 日本館講堂において、第1回 文理融合シンポジウム 量子ビームで歴史を探る ー加速器が紡ぐ文理融合の地平ー を開催しました。主催は、高エネルギー加速器研究機構(KEK) 物質構造科学研究所(物構研)、共催は 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館と国立科学博物館、協催は 日本中間子科学会、J-PARCセンター、新学術領域「宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。」です。

物構研では、茨城県東海村にあるJ-PARC MLFミュオン施設(MUSE)において、世界最高強度の負ミュオンビームの有意性を生かし、文化財をはじめとする人文科学資料の研究にも活用できる可能性を秘めた新たな非破壊研究手法を開発してきました。一方、これまでも放射光や中性子などを用いて、様々な文化財科学の研究が行われています。 そこで、放射光・中性子・ミュオンなどの量子ビームを利用する文化財研究の第一人者たちと、考古学研究に興味をお持ちの方々が一堂に会して、文理融合研究の可能性を探る機会を設けました。 文系・理系の研究者だけでなく研究者以外の方々も交えた100名以上が集まり、活発な議論を行うことができました。

初日にはまず、KEKの岡田 安弘 理事、人間文化研究機構の窪田 順平 理事、J-PARCの齊藤 直人 センター長の挨拶に続き、物構研 小杉 信博 所長の挨拶および講演が行われました。小杉所長の講演は、フランスで量子ビームを用いて文化財を研究しているソレイユ研究所に関するもので、考古学加速器研究をネットワークで結ぶ先進的な研究プラットフォームの実例が紹介されました。

続いて、ミュオンとは何か、ミュオン非破壊分析法の現状に関しての解説を物構研の三宅 康博 主幹が行い、国立歴史民俗博物館の齋藤 努 教授が、丁銀の時代推移とともに進化した「色づけ」文化の変遷をミュオンで調べた研究について語りました。東京理科大学の中井 泉 氏により、放射光を用いた考古学研究を総括する講演があり、大阪大学の寺田 健太郎 教授による究極の考古学試料ともいえるはやぶさ2が持ち帰るサンプルのミュオン分析についての話題提供もありました。
さらに、大学および博物館の研究員から、遺跡から出土した馬具や金貨のミュオン分析についての報告が続き、国立科学博物館の沓名 貴彦 氏からは昨年マスコミにも取り上げられた甲州金のミュオン分析についての報告がありました。また、中性子・放射光による火縄銃や日本刀の分析についての話題提供がありました。 大阪大学の高橋 京子 氏による緒方洪庵ゆかりの薬瓶のミュオン分析の話題では、近世医療文化財の調査・保存技術の確立に向けた取り組みについての報告がありました。

1日目のプログラム終了後には、和やかな雰囲気の中で懇親会が行われ、今年日本学士院賞を受賞したばかりの永嶺 謙忠 KEK名誉教授が挨拶しました。

東京理科大学の中井 泉 氏
大阪大学の高橋 京子 氏
KEKの永嶺 謙忠 名誉教授

2日目午前はミュオンを用いて新たな分析法に挑む若手研究者の講演が続きました。続いて、大阪大学の二宮 和彦 氏、工藤 拓人 氏、梶野 芽都 氏によるミュオン分析法の新展開としての同位体分析、化学状態分析、新たな非破壊分析法として、国際基督教大学の久保 謙哉 氏による負ミュオン寿命測定法、物構研の竹下 聡史 氏によるミュオンスピン法の提案などが行われました。
午後には、中性子を用いた歴史探索として、名古屋大学の鬼柳 善明 氏による日本刀の研究、ミュンヘンのシュリンジャー博士による古生物のイメージング、日本原子力研究開発機構の篠原 武尚 氏によるパルス中性子を用いた可視化技術に関する講演がありました。
最後に、パネルディスカッションが行われ、文理融合研究を前進させるための進め方、今後の方向性についての全体討論が行われました。

皆様のおかげで大盛況のなかで第1回文理融合シンポジウム「量子ビームで歴史を探る」-加速器が紡ぐ文理融合の地平-を開催することができました。この文理融合シンポジウムは今後も継続して開催の予定です。

パネルディスカッションのようす
パネラーは、左から齋藤 努 氏、小杉 信博 氏、鬼柳 善明 氏、沓名 貴彦 氏、久保 謙哉 氏、三宅 康博 氏、中井 泉 氏
活発に行われた質疑応答のようす

プログラム

1日目 7月27日(土)13:00~
講演題名 講演者
挨拶 岡田安弘(KEK 理事)
挨拶 窪田順平(人間文化研究機構 理事)
挨拶 齊藤直人(J-PARCセンター長)
挨拶・フランス放射光施設SOLEILにおける文化財研究 小杉信博(KEK物構研 所長)
ミュオンとは!ーミュオンによる非破壊分析ー 三宅康博(KEK物構研)
傷つけずに測る文化財のナカミ 齋藤努(人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館)
放射光X線分析で物質史を読む 中井泉(東京理科大学)
究極の考古学資料はやぶさ2の分析に向けて 寺田健太郎(大阪大学)
【休 憩】
定東塚古墳出土馬具にミューオン分析から見えてくるもの 清家章(岡山大学)、松本直子(岡山大学)
金貨の表面処理を非破壊で探る 沓名貴彦(国立科学博物館)、西願麻似(山梨県立博物館)
量子ビームを用いた鉄鋼文化財研究の新展開-火縄銃・日本刀・自在置物の非破壊分析を通して- 田中眞奈子(昭和女子大学)
近代医療文化財の普遍的価値創成:『薬箱』の包括的保存技術の確立と実践 髙橋京子(大阪大学)
【懇 親 会】国立科学博物館 講堂
2日目 7月28日(日)9:00~
講演題名 講演者
ミュオン捕獲ガンマ線法に微量分析法 土居内翔伍(KEK物構研)
超低速な負ミュオンビームの開発 名取寬顕(KEK物構研)
負ミュオン顕微鏡の開発 超高感度な元素の顕微分析に向けて 永谷幸則(KEK物構研)
ミュオン分析法の特徴@MUSE 反保元伸(KEK物構研)
青銅鏡の成分不均一性の非破壊分析 黒田絢子(国際基督教大学)
【休 憩】
ミュオン分析法の新展開~同位体分析と化学状態分析~ 二宮和彦(大阪大学)
考古学資料の産地分析に向けたミュオン特性X線による非破壊鉛同位体分析法の開発 工藤拓人(大阪大学)
ミュオンを用いた鉄の非破壊化学状態分析 梶野芽都(大阪大学)
負ミュオン寿命測定法による新たな非破壊分析 久保謙哉(国際基督教大学)
磁気センサー・ミュオンを用いた新たな非破壊検査法の提案 竹下聡史(KEK物構研)
【昼 食】
中性子を使った日本刀研究 Study on Japanese swords by using neutrons 鬼柳善明(名古屋大学)
古生代における中性子イメージング Neutron Imaging in Paleontology: Information beyond X-rays B.Schillinger(Technische Universität München)
パルス中性子を用いた可視化技術 篠原武尚(日本原子力研究開発機構)
【休憩】
全体討論 ディスカッション 齋藤努、小杉信博、鬼柳善明、沓名貴彦、久保謙哉、三宅康博、中井泉

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