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名古屋工業大学とKEK物構研の共同研究により、1次元モット絶縁体の光励起状態を精密計算する「電荷モデル」を開発

物構研トピックス
2019年12月24日

電子間に強いクーロン相互作用が働く物質群を強相関電子系と呼びますが、そこでは最も単純な電子状態である「1次元モット絶縁体」においても、電子の波動関数の精密計算は困難でした。

そこで、名古屋工業大学の大村 周 助教、高橋 聡 教授と、KEK 物質構造科学研究所 放射光科学第一研究系の岩野 薫 研究機関講師、山口 辰威 研究員らは、1次元モット絶縁体の光励起状態を記述するための理論モデルとしてスピンと電荷の自由度の分離と電荷揺らぎが両立する「電荷モデル」を開発しました。さらに情報科学的手法を活用した理論計算法を開発することにより、実験結果と比較できる大きな系で光学スペクトルの取得に成功しました。スピンと電荷の自由度の分離と電荷揺らぎが両立することが、光励起過程において重要な役割を果たすことを明らかにしたのです。

この方法により、さまざまな強相関電子系の光誘起現象の機構解明が進展し、強相関電子系を用いた超高速光デバイスの開発につながるとことが期待されます。

電荷モデルのイメージ図
一つのサイトに2つの電子が存在する状態は負電荷を、電子が存在しない状態は正電荷を持つが、負電荷をダブロンD、正電荷をホロンHと呼ぶ。ホロン・ダブロンが1対の基底(左)に複数のホロン・ダブロン対の基底(右)を加えることにより、電荷揺らぎの効果を取り込める。ここで黒丸は1電子占有サイトを表す。

科学技術振興機構(JST)のプレスリリース:1次元モット絶縁体の光励起状態を精密計算する電荷モデルを開発 ~光学スペクトルの理論解析による光誘起現象の解明へ~

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