物構研 中性子科学研究系の瀬戸 秀紀(せと ひでき)教授が、2021年度の日本中性子科学会 学会賞を受賞しました。受賞テーマは「中性子散乱のソフトマター研究への応用と発展」です。日本中性子科学会の学会賞は、中性子科学の進歩発展に寄与しその業績が顕著な者に対して授与されるものです。
12月1日にオンライン開催された日本中性子科学会年会において授与式と受賞講演が行われました。
瀬戸教授は、長年にわたりソフトマター研究に必要不可欠な中性子実験装置群の開発や利用研究に尽力し、物性物理学をベースとしたソフトマター研究において顕著な成果を挙げ、中性子科学の発展に多大な貢献をしたと認められました。
装置開発においては、京都大学原子炉実験所でのスピンエコー分光器の初期開発、東京大学物性研究所に設置されたSANS-U の試料環境アクセサリ及びISSP-NSEの装置開発、J-PARC MLF BL16中性子反射率計 SOFIA の建設、MLF BL06共鳴型スピンエコー装置 VIN ROSE の設置を提案するなど、原子炉および核破砕の両中性子源において深く関与してきました。
またそれらの装置を活用して、ソフトマターの時空間階層秩序におけるマクロ現象へのミクロ視点の導入、特にマイクロエマルションに関しては臨界現象の研究から構造とダイナミクスに及ぼす圧力効果と温度効果、秩序構造とその階層構造に関する研究などを展開し、国際的にも高く評価されています。さらに、生命現象を視野に入れたソフトマター研究という独自の視点から、モデル生体膜の自律運動を中性子小角散乱法により微視的に観察する研究や、生体内で重要な働きをするさまざまなイオン種環境における水和水ダイナミクスの研究などへ広がりをみせています。
さらに、瀬戸教授はKEKや物構研の広報活動においてソフトマターをテーマにした数多くの科学授業の講師を務めてきました。身近な物質ソフトマターの物理学をやさしく解説しています。
瀬戸教授からのコメント:
今回このような名誉ある賞を頂けたのは、助言と励ましを頂いた先生方、一緒に問題を解決してきた共同研究者、そして共に学んできた学生と若手研究者の皆さんのおかげです。どうもありがとうございました。
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