今年のKEK一般公開は、オンライン配信と現地見学ツアーを行いました。
9月3日(土)のオンライン配信は、昨年同様、YouTubeのKEKチャンネルとニコニコ生放送(ニコ生)でライブ配信しました。昼のYouTubeの視聴回数は2425回、最大同時接続数286人以上、昼のニコ生の来場者数(のべ人数)は約6900人、夜のニコ生(小林誠杯)は約4780人の視聴と、今年も多くの方にご参加いただきました。
9月4日(日)の現地見学ツアーは予約した見学コースをグループで巡りました。残暑の残る秋晴れの中、KEK全体でおよそ500人、フォトンファクトリー(PF)を見学するBコース「夢の光の工場」は7便を運行し、127人の参加がありました。新型コロナ感染対策として密にならないよう少人数の完全予約制とし、加速器やビームラインは小グループに分かれての見学となりました。
中性子が好きな小学生、物質・反物質反応について話してくれた小学生、「原子の性質が分かると、そこからいろんなことが分かる」と話してくれた高校生、鋭い質問を投げかけてくれた学生3人組、「普段見られないところが見られて嬉しい」と話してくれた成人の方など、幅広い年代の方にご参加いただきました。ツアーには県外からお越しの方も多くいらっしゃいました。ご来場ありがとうございました。
物構研の引田 理英(ひきた まさひで)助教が広報室の髙橋 将太(たかはし しょうた)さんと一緒に総合司会を務めました。以下、物構研関連のコーナーをピックアップして紹介します。
オンライン配信された内容はこちらから再生できます。
サイエンスライター 川口 敦子(かわぐち あつこ)さんが司会を務め、満田 史織(みつだ ちかおり)准教授ら加速器研究施設(加速器)の3人の研究者が、電子陽電子入射器、アンジュレーター(PFリングでより明るい光をつくるための装置)、先端加速器試験施設(ATF)の4極電磁石の説明をしました。またイチオシの装置として電気を使わないNEG(Non-Evaporable Getter)ポンプの紹介がありました。
引き続き川口さんの司会のもと、物構研の千田 俊哉(せんだ としや)教授が、加速器で作り出された光を利用し、PFではライフサイエンス、ソフトマター、材料、触媒、地球・惑星科学、超伝導など幅広い研究に利用されていることを説明しました。
大強度陽子加速器施設(J-PARC)でのハドロン実験についての解説もありました。素粒子原子核研究所(素核研)の三原 智(みはら さとし)教授の砂浜の砂のように「同じものをたくさん作って調べる」という話は、その後の他のコーナーでも引用されていました。
広報室のルーキー、鈴木 優斗(すずき ゆうと)さんが司会を務め、物構研 瀬戸 秀紀(せと ひでき)教授、素核研の磯 暁(いそ さとし)教授に、量子とは何か問いかけました。瀬戸教授の「粒子でもあり、波でもある」という答えに「イメージがつかない」首を傾げる鈴木さん。そこで磯教授がQuantum Kate【第6話】二重スリット実験の動画を紹介し視聴しました。
物構研に関する発表としては、物構研の中尾 裕則(なかお ひろのり)准教授、加速器の原田 健太郎(はらだ けんたろう)准教授が観測に用いる光と励起光を分ける次期放射光源計画の意義と概要を説明し、加速器の吉田 光宏(よしだ みつひろ)准教授がミュオン加速器について言及しました。
X線誘起相転移とは、X線によって物質の相が変化する現象です。フォトンファクトリーでは、新放射光源施設の候補として、従来の蓄積型の放射光ビームと、入射器からの超高性能電子ビームを一度だけ通過させて得られるシングルパスビームの、2種類のビームの同時利用が可能な加速器を検討しています。このように2つの光を同時に利用することで、X線誘起相転移の解明の他、狙った部分の拡大撮影、高速撮影、試料を加工して追尾しながら測定することも可能となります。中尾准教授は「この新放射光源施設が実現したら、2種類の放射光を駆使し、1つを励起光、もうひとつを観測に用い、いわば2刀流で、このX線誘起相転移の「謎」を解明していきたいと思ってます」と話しました。
原田准教授は次期放射光施設の概要を述べ、「今のフォトンファクトリーでは、測定しながら自由に拡大することや、シャッタースピードを変えながら高速に撮影することはできません。そういった機能を加速器側、光源側でやってしまい、今までにない光を作ったり、今までにない使い方で光を使ったりしたい」と語りました。
加速器の吉田准教授からは、現在稼働中の加速器と研究が進められているミュオン加速器などのエネルギーを比較し、「J-PARCで研究されている超低速ミュオンの応用として、できるだけ早い未来にミュオン加速器を実現したいと思っている」との発言がありました。
KEKにある人々を魅了する建築物、装置、そして自然の風景。それら、加速器施設にある世界のかっこいいもの・場所の1番を決める選手権を開催しました。KEKのSNSでいいねの数が多かった予選上位6枚の中から、オンライン配信当日に投票し、得票数が一番多いものをKEKで最もかっこいいものに認定しました。
KEK内から寄せられた42枚の写真から本選6枚に進出した《No.21》世界で最初の真空封止アンジュレータ。本選で第3位になりました。
来年は現地開催でお会いできるのを楽しみにお待ちしております。