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物質構造科学研究所 諮問委員会の開催報告

物構研トピックス
2020年10月 9日

物構研では、国内外の専門家から構成される評価委員により、施設建設・装置開発・研究成果・組織・運営についての外部評価が行われています。今年これまでに行われた外部評価についてご紹介します。
物構研では、いただいたアドバイスを基に、さらなる研究の発展とユーザーへのよりよいサポートにつなげていきたいと考えています。

ミュオン科学研究系

ミュオン科学研究系では、2月25日から26日に東海1号館にて、所外から7名を招いて Muon Advisory Committee(MAC-2020)とMuon Science Advisory Committee(MuSAC-2019)を同時開催しました。併せて、MUSE将来計画のセッションも実施しました。
J-PARC MLFでの500 kWの安定的な運転と、1 MW運転試験の成功を評価し、2023年度には1 MWでの安定運転を期待するとの声がありました。またMUSEの研究成果も幅広くレベルが高いと評価されました。今後、限られた予算と人員で、研究とユーザー支援と建設及び開発を進めていくためにより一層のプロジェクト管理が必要であること、J-PARCセンター・大学・企業との連携をより深めていくべきという意見をいただきました。

MAC-2020およびMuSAC-2019の参加者

中性子科学研究系

中性子科学研究系(KENS)では、5月27日および6月23日に KEK Neutron Source Science Advisory Committee(KENS-SAC)をオンラインで開催しました。国際評価委員は、KEK Scientific Advisory Committee(KEK-SAC)委員でもある Robert Alan Robinson 博士(オーストラリア、公立ウーロンゴン大学)と、Sung-Min Choi 博士(韓国科学技術院)で、海外のパルス中性子実験施設との比較に重点を置いて評価されました。
KENSでは1装置あたりの人員が世界平均の半分をやや上回る程度ではあるものの、海外からの利用が多く世界のトップレベルの実験環境を整えていると評価されました。また装置開発については、予算と安定的運用とのバランスを考える必要があるとの指摘を受けました。
一方個々の実験装置についてユーザーの所属や出版された論文について評価が行われたほか、KENSスタッフの研究成果についてはマルチビーム利用が多いことが高く評価されました。

放射光科学第一研究系・第二研究系

放射光科学研究系では、各研究部門に分かれて Photon Factory Science Advisory Committee (PF-SAC) が行われています。

構造生物学研究部門

構造生物学研究部門では、2月14日、KEKつくばキャンパスに国際評価委員 Alexander Wlodawer 博士(アメリカ、国立衛生研究所 国立がん研究所)を招き、構造生物学研究センター(SBRC)の現状と将来の展望についてのPF-SACを開催しました。
事前に作成した過去 5年間(2014-2019)の活動報告書および当日のプレゼンテーションに基づき、構造生物学分野における国際的な学術研究拠点としてのSBRCの位置づけやリーダーシップ、研究プロジェクトおよび技術開発に関して評価が行われました。 また、研究施設としての技術開発や将来計画に関して、結晶化施設・生体高分子結晶構造解析(MX)・生体高分子用のX線小角散乱(Bio-SAXS)のビームライン・クライオ電顕とバイオイメージングに関してメンバーが発表を行った後、実際に各ビームラインや実験室を廻り現状説明を行いました。最後に評価委員と SBRCメンバーにより現状への評価と将来への展望について議論が行われました。

諮問委員会の参加者 最前列中央が Wlodawer 博士
材料科学研究部門

材料科学研究部門では、6月24日および7月1日に、オンラインにてPF-SACを開催しました。 あらかじめ、国際評価委員 Jonathan Almer 博士(アメリカ、アルゴンヌ国立研究所 The Advanced Photon Source)に材料科学研究部門のActivity Report 2013-2020を送付し、 1回目の会議では物構研から物構研および材料科学関連グループについての説明を行いました。それぞれの説明に対し、フォトンファクトリーの運営や、工業界や大学との連携について、検出器の開発計画や、放射光実験の詳細に至るまで質疑応答がありました。2回目の会議ではそれを踏まえて J. Almer博士からレポートの提出と講評があり、英語での情報発信を強化するべきとの指摘がありました。

早朝に行われた1回目の諮問委員会での記念撮影
固体物理学研究部門・表面科学研究部門

固体物理学研究部門および表面科学研究部門では、9月9日までに書面にて岡山大学の池田 直 教授を中心とした物構研諮問委員会による評価が行われました。固体物理学研究部門の研究プロジェクト・研究成果については高評価を得ましたが、新しいユーザーや技術者の取り込み、人員配置や後継者の育成などの観点で改善の余地ありとの評価でした。


関連ページ:物質構造科学研究所 評価報告書

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