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日本化学会賞・学術賞をMLFおよびPFのユーザーが受賞しました

物構研トピックス
2021年3月29日

物構研のユーザーが第73回日本化学会賞および第38回学術賞を受賞し、3月19日〜21日にオンライン開催された日本化学会 第101春季年会において、受賞講演が行われました。

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第73回日本化学会賞
「有機半導体材料及び高性能有機EL素子の開発」

城戸 淳二 教授(山形大学 大学院理工学研究科 有機デバイス工学専攻)

日本化学会賞は、化学の基礎または応用に関する貴重な研究をなし、その業績が特に優秀な日本化学会会員に贈られる賞です。
城戸教授はこれまで有機エレクトロルミネッセント素子(有機EL素子)の研究に注力し、基礎研究から工業化に至るまで幅広い分野で独創的な成果をあげたことが受賞理由になりました。

その研究内容は多岐にわたりますが、真空技術を用いない印刷法のみでの高性能有機ELパネルの実用化に必要な基盤技術の研究のため、J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF) BL16の中性子反射率計SOFIAを用いて、製造プロセスの異なる有機EL素子の正孔輸送層/発光層/電子輸送層を観測し、層構造の変化が有機EL素子の性能に与える影響を評価しました。

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第38回学術賞
in situ XAFSによる動的触媒表面解析の確立」

朝倉 清髙 教授
(北海道大学 触媒科学研究所 触媒表面研究部門)

日本化学会学術賞は、化学の基礎または応用のそれぞれの分野において先導的・開拓的な研究業績をあげ、授賞対象となる分野で会誌発表実績があるなどの条件を満たす日本化学会会員に授与される賞です。
朝倉教授は、X線吸収微細構造(Xray Absorption Fine Structure:XAFS ザフス)を化学へ応用し、特に固体触媒表面の動的構造を原子レベルで解き明かすための新たな解析法として確立すべく長年にわたりこの研究領域を先導してきました。なかでも触媒が実際に働いている最中の触媒構造変化を追跡するin situ XAFS解析手法の開発を通じて 触媒反応の本質的理解とこれに基づく触媒機能設計に新たな道を切り拓きました。また、単結晶酸化物表面に分散した金属の3次元立体構造を決定できるin situ偏光全反射蛍光XAFS法(Polarization-Dependent Total Reflection Fluorescence -XAFS: PTRF-XAFS)を開発し、金属担体相互作用の化学結合様式や担体上で金属種が単原子分散を起こす原理を明らかにしました。

これらの技術開発の多くは、KEKの放射光実験施設フォトンファクトリー(PF)を駆使して行われたものです。朝倉教授は、PF創設の頃からXAFS装置の立ち上げに参画し、現在までの約40年間にわたり上述のさまざまな手法を開発し、解析法として確立させました。日本XAFS研究会を立ち上げて会長を務め、現在は国際XAFS学会の副会長を務めるなど、国内外のXAFS分光法の発展にも尽力されています。2006年度にユーザー利用を開始したフォトンファクトリーアドバンストリング(PF-AR)NW-10Aは、日本のXAFS研究者コミュニティの要望を元に朝倉教授が中心となって提案し、建設されたビームラインです。
朝倉教授は、2010〜2011年度に当時のPFユーザー団体であったPF懇談会の会長を勤め、東日本大震災からの復旧のための署名活動や2012年からのPFユーザーアソシエーション(PF-UA)への改組など、XAFSにとどまらず多くのPFユーザーをまとめ上げ、PFや物構研を支えてくださっています。

北大-KEK連携シンポジウムで挨拶する朝倉 清髙 教授(2019年3月撮影)
共同利用実験中のPF-AR NW-10A(2021年3月撮影)

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