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物構研の協力研究員 野田 幸男 氏が日本中性子科学会の功績賞を受賞

物構研トピックス
2020年11月19日

日本中性子科学会が広く日本の中性子科学の発展に顕著な功績のあった者に対して授与する功績賞受賞者に、東北大学名誉教授の野田 幸男 氏が選ばれ、オンライン開催の中性子科学会年会にて授与式が行われました。受賞テーマは「中性子構造解析装置の発展および日本の中性子科学コミュニティ発展に対する貢献」です。
野田幸男氏は、これまで一貫して中性子とX線を用いた構造物性研究を行い、合金の相転移・マルテンサイト変態・水素のダイナミクス・水素結合系強誘電体・マルチフェロイック物質・酸化物強誘電体など多くの物質において顕著な研究成果をあげてきました。受賞理由には「構造物性研究並びに国内外の数多くの中性子構造解析装置の開発・高度化という科学的功績のみならず、中性子科学の黎明期から日本の中性子科学分野の発展のために尽力し、今日の日本中性子科学会および中性子科学分野の礎を築いた功績は極めて大きい」と評されています。

功績賞受賞講演をする野田 幸男 氏
ご提供:東北大学 山本 孟 氏

野田氏は、長年フォトンファクトリー(PF)とKEK中性子散乱実験施設(KENS)のユーザーであり、多くの実験装置の立ち上げに貢献されました。PFでは、1980年代、PF初期のBL-4Cの立ち上げに始まり、近年ではBL-14Aの4軸回折計を用いた精密結晶構造解析を手がけています。また、PFに関しては1996年よりPF懇談会の共同利用担当幹事や運営委員を8期、放射光共同利用実験審査委員会(PAC)委員を2007年度から3期6年、KENSでは1999年から2009年まで中性子実験審査委員会委員や日英中性子散乱研究協力事業研究計画委員会の委員を務められました。その後、KEKの客員教授、ダイヤモンドフェローを務められ、2008年からは現在に至るまでPFの協力研究員となっています。J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)稼働後も、物構研と多くの共同研究を行ったことはもちろん、MLF中性子課題審査の部会長を長く務められ、S型課題S05の初期の代表者でもありました。もっとも最近の共同研究は、マルチプローブ利用によるマルチフェロイック物質の強誘電性に関する研究で、その成果は2020年7月にKEKと東北大学 多元物質科学研究所からプレスリリースされました。
さらに、野田氏はPFユーザーアソシエーションの構造物性ユーザーグループの世話人も任されていました。国内の量子ビーム施設の装置立ち上げに携わった野田氏は、ユーザーグループも「PFのユーザー」に限定せず、「本グループは、SPring-8を中心的に利用する研究グループや、原子炉JRR-3やJ-PARC MLFの中性子やミュオンを利用する研究グループとも協力することにより、幅広い観点から研究を推進し、構造物性研究の中核的存在となることを目指す」といった目標を掲げていたそうです。この理念は、後任の有馬 孝尚氏にも引き継がれました。 当時のユーザーミーティングの記録がウェブ上に残されています。


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